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人生いろは坂
地球一周の旅から10年(20) チリ共和国
2014年12月09日
テーマ:テーマ無し
私達が乗ったトパーズ号はパタゴニアフィヨルドの航海後、太平洋に出た。太平洋に出た途端、明るさが戻ってきた。
それほどフィヨルド沿岸の気候はきびしく寒かった。そして、早朝にチリのバルパライソ港へ入港した。明けやらぬ
湾内は途端にざわめきが始まった。
薄暗い海面や船の前後を横切るのは野鳥の群れだ。中にはペリカンもいるようだ。これらの野鳥たちは客船が巻き上げる
海水の中の魚たちを餌にしているようだ。バルパライソは世界遺産に登録されている美しい街である。特徴あるのは
山の斜面に立ち並んだ家並みの照明がすべてオレンジなのだ。日本のように水銀灯や蛍光灯の寒々しい色ではない。
チリ共和国と言う国は地図で見ていただくと分かるように、太平洋に面して実に長細い形をした特徴ある国土をしている。
理由は背後に屏風のように林立する巨大なアンデス山脈によるもので地理的に隣国と隔絶されているからだ。隣国へ行こうと
すれば、この高い山を幾つも越えなくてはならない。アンデス山脈によって隔てられた天然の要害になっている。
この長大で高い山々は太平洋側から押し寄せてくるプレートの強い褶曲作用によって出来たものである。褶曲作用とは
大陸に出来た皺(しわ)のようなものであり、今もなお成長し続けている。日本でいえばアルプス山脈が同じような作用に
よるものであり、世界最高峰と言われているヒマラヤ山脈も同じような作用で出来たものである。
従って、この山系には今も活発に火山活動を続けている山が少なくない。そして地殻変動による地震の多いのもこの国の
宿命のようなものである。この点においては日本と良く似ている。チリの大地震により東北地方一帯が大津波に襲われた
こともある。広大な太平洋を越えてチリから津波が押し寄せて来たのである。天災においてチリは日本と良く似ており
遠くて近い国である。
チリはアルゼンチンと同じようにスペインの植民地であった。そして様々な歴史的事件を経て独立し、今日に至っている。
この国も白人や白人と先住民との混血が多く、黒人はほとんど見かけなかった。血気盛んな国民性は幾度かの軍政や軍政下での
血塗られた時代を経て今日の安定した時代を迎えている。
火山国であることは資源国でもある。火山のあるところ鉱物資源もまた多い。この事情も日本に良く似ている。かつて
日本も世界的な資源大国であった時代もあった。銅や金と言った貴重金属から鉄のような実用的な金属まで多種多様に
生産し、大陸方面に輸出していた時代もあったのである。黄金の国ジパングはあまりにも有名な逸話である。
この国の主要な輸出品の中に硝石や銅鉱石等があり、今も盛んに日本などへ輸出されている。そしてチリのワインは
あまりにも有名である。日本のワインコーナーには必ずチリ産のワインが置いてある。私達はバルパライソから12キロ
あまり離れた首都サンチャゴまでの移動途中に延々と続くブドウ畑を目にした。こうしたブドウ畑の遥か彼方にワイン
セラーらしき建物が幾つも並んでいた。比較的雨が少ないこの地方は、ブドウ栽培やワイン醸造に適しているらしい。
首都サンチャゴにはサン・クリストバルの丘があり、小さな山全体が公園になっている。この山の頂きにもリオデジャネイロの
それには遠く及ばないが、キリスト教のマリア像が立っている。マリア像周辺は良く整備されていて、ここからサンチャゴ市内を
見下ろすことが出来る。比較的人口の少ないこの国では、多くの国民が首都サンチャゴ周辺に住んでいる。
従って、見下ろす眼下にはひしめき合うよう家が立ち並び、その密集ぶりが良くわかる。そして地形的に盆地になっている
こともあって車などの排気ガスで白く霞んでいた。この街も公害に悩まされているようだ。丘を下りると再びサンチャゴ市内だ。
その市内の建物は、ここもまたアルゼンチンと同じようにヨーロッパ調の装飾の多い重厚な建物群であった。特に中心市街地には
著名な建物が立ち並んでいた。(私のサイト「地球一周旅日記」を参照されたい)
この国にも軍によるクーデターや血塗られた歴史が今も語り継がれている。今でこそ軍政は否定され民主化も行われているが、
隣国アルゼンチンなどと同じように、たった数十年前まで政治的な混乱が続いていた国々である。その過激さは民族的なものなのか
あるいは植民地という歴史的な背景があったが故なのか。とにかく先住民を軍事的に抑え込み、更にはキリスト教で懐柔しながら
侵略を繰り返してきたヨーロッパ全体が進めてきた大航海時代の背景にあった血塗られた歴史は否定出来ない。
さて、市内見学の他にはワイナリーを訪れチリ産のワインを味わい、更には田舎へ行って民芸品を見たり食事をした。
この時に味わったピスコサワーと言う飲み物の爽やかで美味しかったことを今も忘れない。ピスコと言う柑橘類の果汁と
強い酒をブレンドし、それをソーダ水で割ったものだ。あまりにも美味しかったので帰りに立ち寄ったスーパーで二本
買って帰った。しかし、飲もうにも栓が特殊でどのようにして開ければ良いのか分からないで、さんざん苦労したことを
今でも懐かしく思い出す。瞬く間に10年前が過ぎてしまい今は懐かしい思い出話である。
次回はいよいよ太平洋の孤島イースター島の話です。お楽しみに・・・。
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