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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(58) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(58)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/21 10:17:53

+++遠慮して、端から女へ寄り付かなくなる恐れが
ある。そんな状況を自から積極的に作ってはならな
い、と女へ戒めたのである。

58.大いに妬いた

 若い社員からのモーションを警戒して、防衛体制強
化の為に、昼食は外食にせず毎日弁当を作って持参す
るよう、私はアドバイスした:
「ウチの社の社員だって、皆そうしているんだよ。も
っとも、会社は不便な田舎にあるんだけれどねーーー」

「毎朝お弁当を作るのは、面倒よ」
「それじゃ、出勤途上でパンかサンドイッチを買って
持参したら?」
 社長攻略の大事な時期だから、昼食と云えども女の
行動は慎重でなければならない。

 サービス残業までして、仕事を速く覚えようと勉強
する熱心でスタイルの良い女を、社長が憎からず思う
ようになるのは、時間の問題。そんな機会はまもなく
やって来た:
 入社後二十日ほど経った居残りの残業中に、普段か
ら新人の様子を気に掛けていた社長が傍へ寄って来
た。魚が釣り針に寄って来たようなもの、しめしめで
ある。こんな機会が必ず来ると予測していたから、こ
っちはエサを仕掛けてある。

 女は何気ない風で、PC画面のデザインソフトをマ
ウスで操作しながら独り言のように呟いた:
「本を読んでやっているんですが、ここの処がどうし
ても上手く行かないんですーーー、余り初歩的なこと
なので、つい先輩にも聞きぞびれちゃってーーー」 
 デザイン画を示して、恥かし気に小さく嘆息して見
せた。やり方を百も承知のくせに、判らない振りを装
ったのだ

 プロの仕草と美人の嘆息に、観客は簡単に騙され
る。ソフトの専門家であった社長は、手近にある椅子
を直ぐ引き寄せて女に並んで、教えてくれた:
「何だ君、そんな事知らなかったのかい? 訊けばよ
いのに。ここは簡単だ、こうやればいいんだよ」社長
の生暖かい息が首に掛かった。

「思いやりと優しさがあって、教えてくれる社長さん
も楽しそうに見えたわ」
 後日女は私へそう報告して、「お父さん」を大いに
妬かせた。

(比呂よし)

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2014/04/21
みのり
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