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作品名 アカンタレの話(4) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(4)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/29 14:42:21

++++大学で理系工学部を専攻したのも、ひょっと
したら、この時の水飲み鳥のせいかも知れず、小学生
の道草を決して馬鹿にしてはいけない。

4.須磨寺

 帰り道は他の生徒と群れるでもなく大抵一人で、先
の水飲み鳥を眺めたりして、毎日ぶらりぶらりとした
足取りである。

 途中、須磨寺の境内に入り込むこともある。この
寺は、ここだけで独立して総本山を張る名刹である。
最初の内は名刹を鑑賞する気で、ゆるゆるあちらの
松の枝振りを眺め、こちらの銀杏を手で触ったりし
て、神妙に境内を歩く。
 けれども、これは目を眩ますための作戦である。
昆虫の保護色みたいに極力目立たないように景色に溶
け込んで、擬態を謀る。辺りの警戒的な観察者、特に
住職を含めた大人達を油断させる為である。

 住職は無論犬や鳥も含めて、辺りがこっちに無関心
になったと見るや、次にキョロキョロ素早く四方を眺
め回わす。人の居ないのを見澄まして、すぐさま池の
そばへ走り寄る。一抱えもある手近な岩石を拾って、
赤い鯉を目掛けて投げ込むのである。小石だと、死な
ないからだ。
 近くで工事中だから、岩石が何時も豊富なのはラッ
キー。ドッブーン!と痛快な音が響く。大抵一つだ
が、二つ投げ込む時もあって、これが私の密かな楽し
みだった。

 けれども、何度やっても鯉が死んだ試しが無かった
から、結局は岩石の重さだけ無駄骨だった。この陰険
なタチは、今の歳になっても変わらない。
 そんな私の道草癖を知っていて、真っ直ぐに帰って
こい、と母親は毎日口うるさく言ったが、道は元々折
れ曲がっていたのである。

(つづく)

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