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作品名 クワバラの話(2) 評価 評価(1)
タイトル クワバラの話(2)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/20 10:26:16

+++普通の男なら誰だって、配偶者には言えない
内緒事が一つや二つはあるもので、つまりは震え上
がる筈だと思う。

2.展示会

 つい脱線したが、話を戻す:そんな酷い悪筆の反
動のせいか、私は美しく書かれた文字を「眺める」
のが好きである。その為にわざわざ出掛ける程の事
はしないが、何かのついでに身近に書の展示会があ
れば、必ず積極的に覗いてみるクセがある。
 そこで、古今東西の名筆を眺めて、感動している。
磨き抜かれた格調の高い文字は、確かに芸術品で
ある。

 しかし書展であっても、中には真贋のはっきりし
ない文字も混じっている。一応名の通ったらしい人
が下手な字を書き連ねて、「下手な処に、何とも言
えない味わいがあるーーー」とでも、褒めて欲しい
のかと、疑わせるような嫌味な字もある。安っぽい
裏地が見え透いて、そんなのは嫌いである。下手な
ら、素直なヘタクソの方が気持が好い。

 一般に書展で展示されたり、掛け軸や額縁に入っ
て飾られたりする文字は、初めから人に見せようと
いう目的意識があるからか、表現に構えた所がある。
 いわゆる書道というもので、整っていてどちらか
と言えば「静的」な字と言えようか。確かに美しい
し、眺めて最も美しい文字という人もいる。

 けれども他方で、書き手にそんな構えたり飾った
りした意識が無く、無造作にさらさらと仕事上の実
用文して書かれたものや、他人への伝言にメモ用紙
に書き流されものであっても、それが上手な字であ
る時、私は痺れたように感動してしまう。眺めて目
が楽しむ感じだ。
 
 そんな文字は時に躍動し活きている。「大急ぎで
(自分の意志を)伝えたい」という気持ちが現れて
いるから、字が真に身に迫る。メモ用紙と言えども
捨てるのが、もったいない。

 前者の書展で見る字が「静的」であるなら、後者
のメモ用紙は「動的」な字である。後者に活き活き
した生命(いのち)を感じるのは、元々文字という
ものが装飾の為のものではなく、人の意志の伝達と
いうのが本来の役目だから、なのだろう。
 手紙やメモとして書き流された文字こそ、私には
一層輝いて見える気がする。

 同じ字であっても、上手下手は別にして、男文字
と女文字に違いのあるのも面白い。男の文字は何か
力強くエネルギーを感じさせる場合が多い。
 女の書いた字は何処となく優しくてなまめかしい。
線の太さ濃淡なんかも違いがあるから、誰が書いた
かまでは判らなくても、少なくとも男が書いたのか
女か位は、多くの場合見分けが付くようだ。

 書き手が今は無き昔の女性であっても、字が上手
な時、女の姿を空想して何か抱きしめたくなって
しまう。男女で、字の書き方に自然にそんな違いが
滲み出るのは、一体何故なのかと考えると、これは
確かに不思議の一つではある。

(つづく)

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