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作品名 試してみる?の話(7) 評価 評価(1)
タイトル 試してみる?の話(7)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/10 09:30:46

++++ひょっとしたら未だ繁殖力もあるかもーー)
という色が、女達の顔にありありと浮かんでいた。ど
うやら期せずして、私は「キャハハー」の急所を突い
たらしい。

(6)

 こんな空気を素早く読み取って逃さないのが、元
トップセールスマンであった私なのである。ここぞ
とばかり、調子に乗った。
 「それにねえーー」と女達の顔色を窺いながら続
けた:
 「店を開いたら、技術も大切だけど、営業トーク
  はもっと大事だと思うよ。リピーターの獲得が
  一番さ。きっと中年の女性も多く来るでしょう。
  褒め殺しをやるんだ。

 「マッサージをやりながら、こう褒める。「まあ
  奥様、ハリのあるお肌ですわ。こうして触って
  見るとすぐに判ります。手が跳ね返って来ます
  もの。何かスポーツをなさっていますの? き
  っとそうなんでしょうね?」
 「健康の為に週一でダンスの練習をしているの
  よ!」
 「まあそうなんですか、やっぱり!運動なさって
  いる方は、お肌のハリがまるで違いますわねえ!」

 30代の生意気な「キャハハー」の一人が、突っ
込んで来た。
 「もしその奥さんが案に相違して、運動もせず家
  でゴロゴロ怠けているだけだと答えたら、どう
  云う積もりよっ? 困るじゃないの!」 
元トップセールスマンは、すかさず応じた。
 「エッ、そうなんですか!信じられナーイ! けれ
  ど、失礼ですが奥様の年輩で、めったにこんなハ
  リのあるお肌の方はいらっしゃいませんわ! や
  っぱり「生まれ付き」なんですねえ。羨ましいで
  すわーーー」

 たぶらかしのセリフが、すらすら出て来て来る自
分が、げに恐ろしい。こっちを眺める女達の目に、
いよいよ尊敬の色さえ見え始めた。
「純生(じゅんなま)の男」がここにいる!と初め
て認識したのである。瞳(ひとみ)さえ潤んで来た
から、いよいよ「キャハハー」対「たぶらかし屋」
の対決である。

 「使えるかどうか、試して見る?」のゴールに向
けて、私はあと一歩の処まで漕ぎ着けている。クリ
スマスも近い事だし、今月末の卒業日までには、何
とかしたい。

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