読書日記

『母親ウエスタン』 読書日記348 

2024年03月21日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


原田ひ香『母親ウエスタン』光文社(図書館)

リストアップはしてあるものの、図書館でいつでも借りられると思って予約していない本がいくつもある。本書もその一つであったが開架の書棚に並んでいたことと読書の時間的にちょっと余裕があったこと、ことで借りたもの。

内容紹介は2つある。

ひたすらに"母"をさすらう女の物語…。

母のない子持ちやもめの家庭を転々と渡り歩く広美。
短いときは数か月、長くとも数年、トラック運転手や遠洋漁業、
家を長く空ける父子家庭の母親役をして、
家庭が軌道にのると人知れず去っていく。
それは、母性が有り余っているのか、母性がぶっ壊れているのか、
子供にとっては女神でもあり、突然姿を消す残酷な悪魔でもある。

すばる文学賞受賞作家が挑む、初の長編エンターテインメント!
---------------------------------
いつも行く食堂で出会った女の名は、広美といった。気づけば死んだ妻に代わり、子供たちの面倒を見てくれるようになっていた広美。しかしまたある日突然、彼女は家族の前から消えてしまう。身体一つで、別の町へと去って行ったのだ――。家族から次の家族へ、全国をさすらう女。彼女は一体誰で、何が目的なのか? 痛快で爽快な、誰も読んだことのない女一代記。

[目次]
1 彼はすぐに忘れた
2 電話は一度しかかかってこなかった
3 免許証を盗み見た
4 夜明けにロックを歌った
5 耳栓を置いていった
エピローグ

主人公である広美は自称「何も覚えていない」女性である。そして、この話ではもう一つ別の男女、森崎あおいと加藤祐理の話があおい視線で語られ,複層的な進展がある。広美の話はその合間に挟まれるエピソードの様でもある。途中、広美に育てられた元・子どもたちが登場する。広美を黙って消えたにもかかわらず「本当の」母親の様に思い、ついには老後の面倒をみたいと考える様な元・子どもたち・・・しかし、何も覚えていない広美はやはり忽然と去って行く。エピローグでわずかな救いが見られるが、やはり広美がなぜそうするのかははっきりとは判らない。

しかし、それは著者のインタビューであったか、対談であったか、「アメリカ西部劇ではどこから来たのか分からないが一定期間を過ごしてあっという間に消えていく流れ者のガンマンの話があるけれど、それの女性版を狙った」という言葉である意味では氷解した(ただし、その記事を、今探しても見つからない)。うん、内容は確かにその通りの話である。もちろん流れ歩くのはガンマンではなく、ある意味、理想的な母親であり主婦の役割を果たす女性である。

なるほど、流れ者の話を書きたかったのか。西部劇のヒーローたちは実際どの様な思いで流れ歩くのかは判らないのと同様にただ流れ歩く姿を書いたとすれば了解できる。
(2024年2月26日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR







掲載されている画像

上部へ