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『要訣』 <旧>読書日記1524 

2023年12月06日 ナビトモブログ記事
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上田秀人『要訣』講談社文庫

「百万石の留守居役」シリーズの第17巻にして最終巻である。2013年11月刊行の『波乱』から始まったシリーズもようやく終わりを迎えた。と、言うか4月に完結を迎えた「禁裏付雅帳シリーズ」と同様に作者にとっていくつものシリーズを並行的に書くことが手に余るものになってきて止めたのかも知れない。作者のネット上のHPによると「奥右筆秘帳の続編は、現在企画中です。現在のところ詳細は未定です。」ということであるが2013年から歯科医院を休業してからは執筆量が多く大変な状況であった。

さて、本巻はある意味、中途半端な終わり方である。と言うか、初期には「留守居役」という職について、書きたかったのであろうが、今はもうタネも尽きたのか瀬能数馬の岳父である加賀百万石の筆頭宿老・本多政長と将軍・徳川綱吉との関係や幕閣との争いに話が移り、もはや留守居役としての瀬能数馬の出る幕は無いと言ってもよい状況。

本巻の惹句では「神君家康の懐刀と言われた本多正信の血筋を引く重鎮である政長が、国許に戻らないため各藩の留守居役が加賀の若き留守居役・瀬能数馬に接触をしてくる。宿老不在の加賀では、越前福井松平家の国家老次席が訪れ、藩主の綱昌がかつて数馬に書かされた「詫び状」の返還を要求したのに対し、政長の息子である主殿は妙手を打つ。江戸城内、幕閣では、無役の名門・酒井家の処遇が取り上げられ、滞留中の政長と数馬にも影響が及ぶ。本多家に敵対してきた老中・大久保加賀守は代々の遺恨を晴らすために、配下に密かに命令を出す。加賀の前田家では、主殿が内紛をおさめた。一方ついに徳川御三家の紀州藩主が数馬の妻・琴を狙い動きはじめる。」

ということであるが、本多政長が綱吉との繋がりをもって徳川光貞(紀州藩主)や老中大久保加賀守を掣肘して終わり、数馬その嫁たる琴とともに加賀に帰るところで話は終わる。

話を始める時に、その終わりを考える、とは著者の弁であるが短いシリーズものであればともかく10巻を越える様な話ではそのような計算もなるまい、と思う。話が長くなればなるほど枝葉が茂り、実在した人の一代記でも無ければ先の見通しは付かないのが普通だろうと思う。
(2021年6月17日読了)



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