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たかが一人、されど一人

読後感「天路の旅人」沢木耕太郎著 

2022年11月12日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

 長いこと読みかけでツンドク状態の本があるのに書店で立ち読みして興味を覚え、購入したのが今月5日の午後1時半頃。それから毎日読みついで5日ばかりで読了してしまった。560頁を超す大著だから、自分としては相当引き込まれた本だったと言える。著者は有名なドキュメンタリー作家であることは承知しているが、作品を読んだ記憶は殆ど無い。しかし本書を読んで優れた書き手であることがよく分かった。内容を簡単に触れよう。主人公は大正7年生まれの山口県の田舎育ちの青年、西川一三氏の物語。先の大戦末期に満鉄に就職していながら、思うところがあって内蒙古に設立された興亜義塾と言う国策的な専門塾に入学、紆余曲折は省くが、昭和18年に陸軍の特務員に採用されて西南の奥地探検に乗り出す。その2年後には日本は敗戦を迎え陸軍も消滅するが、西川氏がそれを知るのはチベットから更にヒマラヤ山脈を超えてインドに入る頃。西川氏はヒマラヤ超えを9回(11回かもしれぬと著者は言う)もしたとされている。氏が結局インドで逮捕されて日本に帰国できたのは昭和25年。中国や今で言えばブータンやネパールインドなどの国々を含め何年間も歩き回った体験は当然ながら日本でも評判になったし、西川氏自身も諜報員としての自覚もあったのだろう、記録を丹念に整理してあった。そして「秘境西域八年の潜航」なる自著も出版されている。しかしこれはそんなに評判にはなっていない。著者沢木氏はそれを知り、詳細に読み込んだ上で西川氏に面会を申し入れて、旅の詳細を2回聞いたそうだ。勿論職業は明かしていたが、著作の意思は示さず約2年で月1回2晩の定期的会合は一旦閉じたとのこと。本書が発売されたのは今年の10月、最初にインタビューをした時から25年の歳月が過ぎていたとのこと。著者はこのように言っている。【「秘境西域八年の潜航」と言う書物がありながら、あえて彼の旅を描こうとするのはなぜなのか。私は、何度も、そう自問した。そして、やがて、こう思うようになった。私が描きたいのは、西川一三の旅そのものではなく、その旅をした西川一三という稀有な旅人なのだ、と。】著者の思いは見事に実現された。彼に描かれた西川一は、大陸での旅は勿論だが、帰国後の生き方考にも共通するものがある。一見孤立しているようで、勇気だけでなく他者を思いやる心、ある意味仏教に通じているのかもしれぬが。いずれにせよ強く打たれるものがあった。これが正直な読後感だ。

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