ひろひろ48

町田そのこさんの新作 

2021年11月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞と言えば、作家の名前を憶えていなくても、ああって、思うかもしれない。「52ヘルツの・・」のは、本屋大賞のキャッチコピーで必ず泣けるだっけな?でベストセラーになり、映画化も進行中。その町田そのこさんの新作が「星を掬(すく)う」が出版され出版された。本人インタビューのコラム「書く人」から:by 谷野哲郎
母子の「呪縛」リアルに:
一度提出した原稿を取り下げ、何度も書き直したという。今年4月「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞した注目作家の新作は、今までにない難産だそうだ。「読み返したときに、これは前作の劣化版だ、これではダメだと納得できなかったので、10回以上改稿しました」
テーマの重さを考えれば慎重になるのも当然か。人格を無視した教育、男性からの暴力、親の介護など、日常に隠されたさまざまな問題が赤裸々に描かれている。ページを開いた読者は、母と子の数奇な運命を体験することだろう。
主人公の芳野千鶴はパン工場に勤める29歳。元夫からのDVに苦しめられる中、22年前に自分を捨てた母・聖子に出会う。自分の不幸は全て母のせいだと呪ってきた千鶴。しかし、再会した母は若年性認知症を患っていた。
やり場のない怒りをあざ笑うかのように、徘徊など介護の問題が千鶴に降り掛かる。あるとき、便失禁した母が言う。「こんな姿を、晒したくないの、娘に」「お願い、あんたが私を捨ててt」。母と子のありようを問う意欲作だ。
著者は血のつながった母子関係を「呪縛」と記す。穏やかではない言葉にリアルがにじむ。なぜ、この人の子どもに生まれてきたのか。自分で選べない親との絆は今、若者の間で「親ガチャ」とやゆされる。果たして親子は本当にカプセル式玩具のように運頼みの産物でしかないのか。もし、「親ガチャに失敗した」と嘆く人がいれば、本作を読んでもらいたい。
登場人物もタイトルも違うが、実は「52ヘルツのクジラたち」の続編的な意味合いを持つ。前作は虐待する母親の視点で物語を書いたらどうなるんだろう、と。非難される側にもそうせざる得ない何かがあったんじゃないか。「52ヘルツ」で書ききれなかった部分を拾い上げてみようと思ったんです」
「星を掬う」というタイトルは秀麗だ。「掬う」は「救う」とも読み取れる。聖子が掬いあげた星とは何か。彼女に救われたものとは。ラストシーンは温かく美しい。「私は母子関係の答えは一つではないと思っています。うちの家庭はこうだなとか、こういう葛藤があるんだな、とかそういう皆さんの読後の感想まで含めてひとつの作品になればうれしいです」



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