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たかが一人、されど一人

読後感「けものたちは故郷を目指す」安部公房著 

2021年08月22日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

 これまで安倍氏の小説を読んだことがなかったが、次女が「お父さん安部公房の小説て読んだことある?面白いよ。」と言われ、小説のタイトルまで聞かなかったが、悔しいので書店で適当に選んで読んでみた。昭和32年に発表された小説だが、確かに面白かった。前回読んだ堀田善衛氏の小説もそうだったが、先の大戦で日本が負けた後の大陸における日本人の生き様と関係していたが、本書にも共通するところがある。但し、前者は上海と言う大都市、今回は満州の奥地、しかも興安嶺山脈?の西側極寒の地から始まる。時は終戦の約2年後くらいか。主人公はそこに取り残されたいる日本人の少年(年齢不詳)、当初はロシア兵の中で暮らしている。そしてある日、南方面への鉄道が出るというところから話が始まる。堀田氏の「上海にて」も同じだが、終戦から2年間ぐらいの大陸の混乱について、現代日本人は殆ど理解できていない。現代のアフガンと同じだと思うが、様々な勢力が混在している。ロシアの軍隊、八路軍と言われた共産党軍、蒋介石の国民政府軍、蒙古軍等である。ただ一つ日本軍の姿だけは見えなくなっている。その代わりと言うのも変だが、日本人の民間人が曖昧な形で大陸の各地に置き去りにさらされていたのだろう。周りの勢力は全て武器を持つ軍隊だ。その尋常でない状況の中を、未成年の主人公が艱難苦労をして日本海沿岸にたどり着き日本船に乗り込むまでの冒険談とも言える。面白いと書いたが、先ず背景になっている舞台を想像するのに手間がかかる。最初は汽車に乗り込むことが出来たが、汽車はすぐに転覆、旅の大半は徒歩、途中でたまに出会う民間人は全員が追い剥ぎか強盗と思えば間違いない。主人公を取り巻いて登場する人物にある偽名を名乗る不思議な人間が登場する。旧日本軍の軍人だったかスパイだったか得体のしれない男だ。主人公の少年はこの男と協力しながら故国を目指すが、途中ではぐれて一人になってしまう。しかし同行していた男から吸収した生命力を振り絞り、独力で日本海沿岸に辿り着き、日本船に乗り込むことが出来た。そこで少年が目にした故郷に、何があったかがお楽しみなので、これ以上は書かないことにしたい。アフガン混乱の報道が増える中、似たような戦後ソ連と国境を接した地帯での混乱時に何が起きたか、嘗ての日本が大陸で何をしたか考えるには格好の読み物だった。

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