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桂宮治真打昇進披露公演(後編) 

2021年04月02日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

チケットは、国立劇場チケットセンターに、パソコンでアクセスして購入している。
国立劇場に事務局を置く「あぜくら会」に入会しているので、値引きや先行予約などの特権がある。
入会金や年会費を払っても、直ぐに元を取ることが出来るから、損はない。
月刊の会報を送ってくれるのも有り難い。

披露公演(三月中席)のチケットを取るのに、発売を開始して数秒後にチケットセンターにアクセス出来た。
それでも、事実上の最前列である、二列目の中央ブロックに空きはなかった。
幸い、前が空席になっている三列目が取れた。
三密を避けるために、発売する座席数を減らしているのだ。

宮治師匠は、若手の登竜門である花形演芸会のメンバーということもあり、二ツ目時代の高座を何回か観たことはある。
真打昇進披露公演とはいえ、これほど速さで、チケットが売れる噺家とは思っていなかった。
当日、二列目は、仲間と思しき若い女性で埋まっていた。
師匠は寄席以外でも広範囲で活躍しているらしく、固定ファンが少なくないようだ。

通常、出囃子と共に出演者が姿を見せると拍手が始まり、座布団に座ると静かになる。
噺家がお辞儀をすると、再び、拍手が始まる。
ところが、宮治師匠の場合は、出囃子が聞こえた途端、姿を見せる前から拍手が始まった。
そして、師匠の合図と共に、ピタッと止んだ。

世間話的な短いマクラが終わると、場内の照明が暗くなった。
明治初期に三遊亭圓朝が創作した、怪談話「江島屋騒動」だと、直ぐに分かった。
買った婚礼衣装が糊付けされたイカモノで、破談になったのを悲観して首を吊った娘の母親が、売った江島屋を呪う怖い噺だ。
晩年の桂歌丸師は、圓朝作品を好んで高座に上げており、私は「江島屋騒動」を観た感激を今でも覚えている。

人間国宝級の噺家と、新真打の芸を比較するのは、野暮というものだ。
とはいえ、宮治師匠の熱演は中々の物だった。
披露公演では、多くの新真打が大ネタに挑戦するが、必ずしも成功する者ばかりではない。
その点、彼の「江島屋騒動」は、今後の活躍を確信させる素晴らしい出来だった。



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写真
2021年3月15日(月)撮影:国立演芸場三月中席五日目の演題



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