メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

吾喰楽家の食卓

国立演芸場の千穐楽 

2018年12月12日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

昨日、国立演芸場の中席初日へ行った。
仲トリの古今亭志ん橋が休演で、代演は林家正雀だった。
正雀は“私が好きな噺家ベスト10”の一人だから、代演は大歓迎である。
しかし、志ん橋は後期高齢者に近いだけに、休演の理由が気になった。

正雀は、師走の高座に相応しい噺の一つ、『掛取万歳』を口演した。
職人の八五郎(江戸落語)が、次から次に来る借金取りを、相手の好きなことで撃退する古典落語である。
狂歌、長唄、芝居、義太夫、三河万歳など、多彩な芸能に精通していないと口演できない噺だ。
さほど、珍しい噺ではないが、演題の由来である三河万歳まで見たのは、実演では初体験だった。
気分的には、これで終演でも満足できるほどの素晴らしさだった。

中入り後は、林家楽一の紙切りから始まった。
楽一が云うのには、現在、八人の紙切り芸人の生存が確認されているらしい。
私は、国立演芸場で、今丸、正楽、二楽、花、楽一と、合わせて五人を見て来た。
楽一は、話術も含め、師匠の正楽に芸風が似ている。
リクエストが途切れたので、思わず「餅つき!」と、声を出してしまった。
女房の尻を叩いて餅つきの真似をする、古典落語を思い出してのことだ。

トリの入船亭扇遊は、『妾馬』を口演した。
大名屋敷に奉公した、職人八五郎の妹つるが、お世継ぎを出産する。
殿様にお目見えした八五郎が、酔っ払って「末永く妹を・・」と、しんみり頼む場面が、一番の見せ所である。
その場に居るのに声を出さない妹と、居ない母親の姿が浮かんで来た。
涙が滲んできたが、泣き笑いと云った方が正確だろう。
幕が下りた後は、何故かすっきりした心持だった。
私にとっては千穐楽の国立演芸場だったが、冷たい小雨が降る中を満たされた気分で後にした。

   *****

写真
12月11日(火)撮影:演題と紙切り(餅つき)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

パトラッシュさんへ

吾喰楽さん

こんにちは。

アカデミックなコメントを、有難う御座います。(笑)

元々、「カタルシス」は、演劇用語のようです。
ですから、落語で得ることが出来ても、至極当然のことかも知れません。

東京は勿論ですが、大阪や名古屋など、常設の寄席がある地域にお住まいの方に、特にお勧めします。
落語は、交通費を除けば、非常にコストパフォーマンスが良い道楽です。

2018/12/12 12:37:30

viva落語

パトラッシュさん


「そこに展開される世界への、感情移入が行われることで、
日常生活の中で、抑圧されていた感情が解放され、
快感がもたらされる」
これが「カタルシス」と言われ、そもそもは、
アリストテレスが説きました。

落語には、ギリシャ哲学に通じるところも、あるのですね。
皆さーん、吾喰楽さんを見習い、もっと落語を聞きましょう。

2018/12/12 11:18:47

PR







上部へ