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吾喰楽家の食卓

仲トリ・志らく(2) 

2018年10月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

仲トリの立川志らくは、うつむき加減で高座に姿を現した。
テレビで見るのと感じが異なるのは、眼鏡を掛けていないからだ。
最近は必ずしも守られていないが、日頃は眼鏡を掛けている噺家でも、高座では眼鏡を外すという不文律がある。
どなたか失念したが、マクラで眼鏡を掛けていても、本題に入ると外す師匠がいた。
もしかしたら、講談の先生だったかも知れないが。

ネタ出しの演題は、お馴染みの古典『寝床』である。
短い挨拶をしただけで、本題に入ったから、たっぷり噺を聞かせてくれると期待した。
あちこちに、聞き慣れない台詞が入ったのは、噺のリアルティを増すための志らく師の工夫だろう。
また、「笑点の三平は下手だ」とか、丁稚に対して「位牌の件は許すが・・」などと、前の出演者の演題に因んだ“くすぐり”も入れた。
それを、何食わぬ顔をして遣るものだから、尚更、面白い。

噺自体は、オリジナルに忠実に進めているようだった。
やや早口だが、私の聴力でも、充分に聞き取れた。
これでもか、これでもかと、畳みかけてくる度に、客席はどっと沸いた。
もう少し間がある方が、聞いていて疲れないと思った。
持ち時間を十分超える、四十分の熱演だが、飽きることなく、最後まで楽しむことが出来た。

トリの柳亭市馬は、古典の大ネタ『らくだ』を口演した。
それまで気が弱そうに見えた屑屋が、酒を飲んで豹変する様は圧巻だった。
飲む所作は、見事すぎて笑うしかなかったが、周囲でも失笑に似た笑い声が起きた。
らくだの兄貴分との掛け合いは、テンポよく遣っていたが、程よい間があり、聞いていて疲れることはなかった。
今までに幾人もの師匠の『らくだ』を聞いてきたが、その中でトップクラスの出来かも知れない。

仲トリの志らく師と、トリの市馬師の違いを一言で云うと、「間」だ。
志らく師は、チケットを取り難い噺家の一人ではある。
それでも、若手だから、まだまだ伸びしろのある、有望な噺家と云える。
噺家の良し悪しは好みの問題で、簡単にどちらが上手いとは云えない。
伸び盛りである若手の熱演と、ベテランの円熟した芸を見ることが出来た、素晴らしい夜だった。



   *****

写真
10月13日(土)の国立名人会の演題



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ぼてふりさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。
アップ早々、コメントを有り難う御座います。

『地獄八景亡者戯』は、先日、米團治の口演をテレビで見ました。
ダイジェスト版ですが、面白かったですよ。
上方落語では、日本の話芸で見た福團治の『鼠穴』が素晴らしかったです。

私は子供の頃のラジオから始まり、長い事、落語に親しんでいますが、空白期間も長いのです。
本格的に実演を見始めたのは最近のことで、造詣が深い訳ではありません。

2018/10/16 07:52:18

寝床

ぼてふりさん

私は二代目桂枝雀のものが好きで何度も録画を見ました。迷惑極まりない旦那さんとその取り巻き連中の噺は何度見ても面白く好きな噺の一つです。
地獄八景亡者戯〜これも長編ですが想像豊かになって、実に愉しい噺だと思います。
吾喰楽さんほど深くは知りませんが、落語は日本独自の優れた演芸だと自信を持って言えます。

2018/10/16 07:29:44

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