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持って行く話　

2015年04月16日
テーマ：テーマ無し

朝から晴れ。

一昨日夜、
昔の仕事仲間Ａ君より
３０年ぶりに電話があり
午後、
横浜で会おうということで
昨日、出かけた。

改札で待ち合わせたが
声をかけられても
そのときは
彼だと思い出せないほどに痩せていた。

西口のカフェに連れて行き
表の喫煙テーブルで話す。

久し振り、の挨拶を済ませ
近況を報告し合う。

彼は去年の暮れ
胃潰瘍の手術を受けたとのこと。

女房も医者も言わないが
自分は癌だと思っていて
逆に騙されたふりをしている、と
力なく笑う。
自分のことは
自分が一番分かってるもんさ、の言葉に
同感だ、と頷く。

きょうは
身辺整理のひとつとして
ここに来た、と
くぼんだ目でこちらを見る。

本当なら
墓に持って行くべき話だが
考えた末、話しておく、とのこと。

それなら
最後まで持って行け、と応えるが
心を引き継いでもらいたい、だと。

……

話し終えた彼の表情は
重い荷物を降ろしたかのように
深いため息をついた。

背負わされた自分は
逆のため息をつく。

沈黙の多い会話が終わり
それじゃあ、
と言って互いに手を上げ
小さく頷く。

改札まで見送った彼の背は
人混みの流れに漂う枯葉のようだった。

またひとつ
墓まで持って行く話が増えた。

やるせないなあ…

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