この作品は近くのレンタル屋で見かけて、借りてみました。2011年の作品ですが、白黒作品です。
哲学者のニーチェはイタリアのトリノを旅行中、鞭に打たれる馬を見かけ、駆け寄り馬を守るように馬の首を抱きます。そしてそのまま昏睡状態になります。そしてこの時から彼の精神は異常をきたし、死ぬまで2度と正気にはならなかったといいます。
しかし多くの人はその後その馬がどうなったかは誰も知りません。この映画はその馬のその後を描いたフィクションとされます。
この映画は恐ろしいほど単調で、音楽もなくほとんど会話も2時間半の中でありません。ハリウッド作品に慣れた人は最初の5分で投げ出すでしょう。なにしろ最初に書いたニーチェのエピソードがナレーターにより語られた後、荒野に馬を走らせる年老いた馭者と馬の走るシーンがただただ7分近く流れるだけなのです。
特にストーリーはありません。登場人物もこの老人と娘ぐらいです。隣人と旅人が出ますが、映画のほとんどはこの二人の姿を追うだけです。
しかし、最初の7分を耐え見続けているとモノクロの画面の美しさに気が付きます。カットの全部が素晴らしい映像です。そしてこの父と娘の姿に見る人なりの人生の哲学的な思考が浮かびます。最初の一言が映画が始まって30分したころ発せられます。そこまで耐えられた人は最後まで見られるかもしれません。私は時間とともにこの作品に魅惑されました。でも誰もが受け入れられる作品だとは思いません。私の評価は高いですが、かなり意見の分かれる作品だと思います。芸術的映画を見たい人にはお勧めします。アクション、サスペンス、ロマンス、コメディなどが好きな人はこの作品は無駄あるいは終わりまで見ることは無理でしょう。
|