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作品名 こんな夜更けにバナナかよ 評価 評価評価評価評価評価(5)
タイトル こんな名前の映画かよ
投稿者 パトラッシュ 投稿日 2019/01/03 14:04:23

私は当初、この映画を見たいとは、思いませんでした。
「こんな夜更けにバナナかよ」
題名からして、ドタバタ劇を、連想させるではありませんか。
主演者のこともありました。
大泉洋という男優です。
そのキャラクターは「軽妙」を通り越し「軽薄」にしか、見えません。
俳優と劇中人物は、もちろん、別人格です。
しかしながら、恭謙や篤実とはほど遠い、その顔を、長時間にわたり、
見続けるというのも、辛いものがあります。

私には、埒もない……と思いながら、つい、見てしまうブログが、幾つかあります。
一種の惰性でありましょう。
「見るまいと 思えど今日の ブログかな」(拙句です)
その中の一つに、この映画を評する文がありました。
「素晴らしい映画です。日本アカデミー賞に、ノミネートされるのは確実です」
こう激賞するのが、鈴々舎馬桜さん。
落語家です。

彼はきっと、芸の肥やしにするのでしょうね、芝居をよく見ます。
そして映画も。
「辛口評論」を身上としておられるのでしょう、役者の演技などに、
厳しい注文を付けることがあります。
考えてみれば、落語もまた、演劇の一部門と捉えることが出来ます。

その馬桜師が、手放しで褒めている。
ならば、見てみようか……と、私もその気になったのです。
「どうしますか?」
傍らに居る人に、声をかけました。
一緒に行きますか?という意味です。
夫婦の間で、価値を共有する。
それは、家庭平和のために、大事なことだと思うのです。

しかし、彼女は言いました。
「身障者が、その同情されるべき立場を利用し、威張っている映画でしょ。
この前、予告編を見たわ。
いい気持がしないから、わたし、止めておきます」
これ、もっともです。
私だって、つい先日まで、同じ見方だったのですから。

手の平を返したのは、私の方です。
それも、他人の意見を盲信してです。
内心、忸怩たるものがあります。
私は、一人寂しく、映画館に行きました。
というのは、もちろん修辞上の誇張でありまして、古女房に断られたくらいで、
誰が今さら、がっかりなんか、するもんですか。
映画館は(今はシネコンと言う)は、新宿の歌舞伎町にほど近く、
一人をこれ幸い、帰りに、キャバクラでも寄ろうか……
くらいに、むしろ清々としているのです。

 * * *

というのは、もちろん虚勢でありまして、今の私に、紅灯の巷を遊歩する、
その元気がないことは、言うまでもありません。
「どうだった?」
帰った途端に、妻から聞かれました。
映画のことです。
断わったものの、気にはなるのでしょうね、彼女だって。

「予想と違った。身障者が、威張っているように見えて、実はそうでない。
喜劇でもない。お涙頂戴でもない。
ボランティアの人々との、心の通い合いかな……映画が描きたかったのは」
我ながら、要領を得ません。
要約するのが、とても難しい映画……ということも出来ます。

「まあ、見る価値は、あったということかな」
取りあえず、こんな説明しか出来ません。

主人公は、筋ジストロフィーを病み、半身不随です。
いや、動かせるのは、手先と首くらいですから、八身不随と言っていいでしょう。
当然のように、一人では生きられません。
にも拘らず、独居生活を送っています。
援助の手を差し伸べてくれる、ボランティアの人々が居るからです。

そのボランティアに対し、彼が威張っている。
それは時に、傲慢に見えるくらいです。
夜中に、バナナを食べたいと言い出すのも、その一つです。
普通の人間なら、そのわがままに、怒りますよね。
この映画の、女性ボランティアもそうです。

「何様なの?
障がい者だったら、何を言ってもいいの?」
怒り出します。
当然です。
「もう来ない。二度と来ない」
絶縁を宣言し、去って行きます。
私はもちろん、観客の多くが、これに賛同していることでしょう。

「威張る」
それは、どの世界であっても、不快な光景だからです。
ましてや、世話になって居る身です。
ところが、この映画の主人公は違います。
「世話になる」という従属的概念を、打破しようとするかのごとく、放恣に振る舞う。
挙句の果てには、四肢の動かぬ身でもって、恋までも……
この辺り、かの乙武洋匡さんを、彷彿としないでもありません。

私の何処かに、身障者を見下す気分が、あるのだと思います。
そしてまた、ボランティアに対する、基本的な考えにも、疎漏がありました。
それは「やってやる」ではなく「やらせてもらう」のが、本来なのです。
そのことを、昨年話題になった、スーパーボランティア、尾畑春夫さんの生き方を通じ、
学んだばかりでした。
しかしながら、凡人の悲しさ、そのことを、のど元過ぎた途端に、
忘れてしまっているのです。

そのことに、再び気付かせてくれる映画でした。
では、お前に、それが実践出来るかとなると、それはまた、話が別なのですが……

さて、この映画の評価です。
見始めて、三十分くらいまで、私は後悔しておりました。
うかうかと、馬桜師の過褒に釣られ、やって来たことをです。
そしてまた、主人公の放恣と躁狂に、腹が立ってです。
だから、当然のように、☆☆でした。

これは、ちょっと違うぞ……
あの奇矯や騒擾には、理由(わけ)がある。
と知り、☆☆☆となったのは、一時間が経った頃です。

見終った時には、☆☆☆☆☆となりました。
胸のつかえが、すとんと落ちたからです。
ところどころに、粗もあり、本当は、☆四つ半なのですが、この評価欄には、
半がありません。
おまけして、☆五つにしました。

良い映画です。
さりとて、是非見に行きなさいと、お薦めするつもりもありません。
「お好きにどうぞ」
私は、妻に対しても、こう言って、突き放しております。

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