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作品名 アカンタレの話(44) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(44)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/02/08 11:07:03

+++どう見ても、人を相手のセール
スマンとは縁遠い。私の人生は、生来
の自分に最も不似合いな道を強制的に
歩まされた、という気がしてならない。

44.過酷

 視点を変えて考えると、私には実現
の可能性の高かった、もう一つ別の人
生があった気がする。

「社長になる」という「人生の目標」
を持たずに、小ニ以来の強迫観念に囚
われてさえなければ、こうなった筈
だ:主任教授の推薦する超大会社にす
んなり就職するなり、或いは中堅企業
のエリートコースの就職先を、そのま
ま辞めないで歩む人生である。

 そうすれば、家族・夫婦を含めた私
の人生は「もっと安泰」で、「もっと
穏やか」で、そこそこ出世して人生を
人間らしく「もっと楽しめた」筈だと
思う。

 死に物狂いでトップセールスなど
に、何も好んでなる必要は無かったに
違いない。ストレスが少ない生活だ
から、私に同伴する配偶者も病に罹ら
なかったろうし、私は西日を追いかけ
回す「悪夢」にうなされる事も無か
った。

 これは決して悪い人生ではなく、ひ
ょっとしたら(今より)もっと幸せで
さえある。考え一つでこの人生を自然
に選び取れた筈で、何も社長になるば
かりが得をしたり偉い訳ではない。

 この平和で穏やかな幸せを投げ打っ
てまで、「社長」への険しい道を選ぶ
のは果して意味があったのかと、考え
込んでしまう。
「アカンタレでない!」のを立証する
のが、人生にそれ程までに重大事だっ
たかと怪しむ。

 原点を辿れば、小ニの女の子に行き
着く。学校の帰り道にわくわくしな
がら、手提げ袋を振り回していた女の
子に初めて声をかけた瞬間を、今も覚
えている。 

 全てがそこからスタートした。彼女
が山道で突き付けた「アカンタレ!」
に、強いアレルギー反応を起こし、
「アカンタレでないぞ!」→「社長に
なる!」という鉄の意志を固めさせ、
そこから一歩も抜け出られなくなって
しまった。

 結果的に、彼女は私の首根っこを捕
まえて離さず、私だけでなく家族をも
巻き込んで、生涯「引き摺り回し」続
けたのである。人生に、これが過酷で
なくて何と呼ぶべきかーーー。
 彼女の存在が、好きや嫌いや初恋と
言う安いランクでないのは、そんな処
に理由がある。
(つづく)

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