+++思考は飛躍し、近年までここに木造の小屋が
存在したらしい、となった。飛躍の序でに更に勢い
良くジャンプした:あの子の茶店だ!
21.追憶
「女の子」の棲家の跡を、ついに見つけたーーー。
思わぬ発見に感動して、石垣に寄りかかって空想の
総仕上げをやり始めた:規模から観て中世の戦国時
代に、この石垣は砦として構築されたものに違いな
い。その後、使われること無く何百年の時代を眠っ
ていたが、昭和になってハイキングする人が増えた。
昔砦の屯所になっていた平らなこの場所が、石垣
もあって丁度あつらえ向きで、ちゃっかり昔の遺跡
を利用して茶店が作られたのである。錆びた針金が
それを物語っている。今でこそ人影もまばらだが、
当時は世の中に大した楽しみも無かったから、ハイ
カーが多く案外繁盛してーーー、やがて茶店に女の
子が生れた。
自分は間もなく大学を卒業するが、昔の小ニだっ
たあの子は今どうしているだろう? 自分と同じよ
うに高校や大学まで進学したとは思えない。女の子
が手提げ袋だったのを覚えている。ランドセルが買
えなかったのである。
戦後の小二は、うちの家計もそうだったが、日本
中が食うのに精一杯の時代である。ここで茶店を開
業して繁盛したとしても、たかが茶店である。生活
が精一杯以上のものであったとは思えない。
中学の卒業時には、クラスの三分の一が進学出来
ずに就職の道を選ばざるを得なかった。卒業して、
彼女はこの茶店を手伝っていたのかも知れない。父
親は町に働きに出ていて、茶店の商売は母親と二人
で、やっていたろうか? 時代の流れと共に、店は
やがて寂れたのだろう。
(つづく)
|