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作品名 アカンタレの話(14) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(14)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/01/09 09:23:54

+++女がもし私の方へ顔を振り向けたが最後ーー
ー、それが本当の最後なのだ。真っ赤な口が耳まで
裂けているに違いないと想像すると、震え上がった。
女へ近づき過ぎるのは反って身の危険な気がして、
本能的に数歩身を離した。

14.ジュース
 この時何を思ったか、先を歩いていた女が急に立
ち止まった。恐怖で反射的に私は跳び上がりそうに
なった。全身がビクンと身構えて、近寄らないよう
にこっちも同時に立ち止まった。

 薄暗い中で振り向いた顔は案外普通で、さして怪
しさが無かったから、振り向く瞬間に魔術で顔を切
替えたに違いない。魔女なら、それくらいは簡単だ
ろう。魔術と判っていても私はほっとし、それが女
の見せた初めての親切のように感じた。女は私を待
ってくれたのである。

 私が追い付くと、口数の少ない女が珍しく口数を
倍に増やして難局を救った:「もう少しよ。着いた
ら、ジュースを上げる」

 それを聞いて、あの先の角を一つ曲れば、明るい
処へ出て、茶店が直ぐ目の前にあるのだなと安心し
た。しかし、ジュースに釣られて角を曲がったが、
湿っぽい細い長い道しかなかった。更に先に見える
あの次の角こそと、一縷の望みで曲がってみても、
やっぱり茶店は影すら無かった。

 時間はどんどん経つように思え、距離は登山口か
ら益々迷うように遠くなり続け、山は深く暗くなっ
て行くばかりだった。何処へ連れ込まれるか判らず
不安は極限に達し、うわばみや狼が出るのは、もう
時間の問題となった。

 そうなれば、女も実はあの世界の生き物だから、
終に魔物の正体を現すに違いない。仮にそうでなく
ても、女は足が速いから、私より先に一目散に危険
から逃亡する筈だ。独り取り残された自分は、狼に
捕まり残虐に食われるばかりになる。骨が砕けて、
バキバキ鳴るに違いない。
(つづく)

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