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作品名 アカンタレの話(8) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(8)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/01/03 09:36:09

+++自分の家がクラス中で一番遠方
に位置していると信じ切っていたか
ら、それだけの根拠で、女の家が距離
的に遥か手前にあるものと楽観的に解
釈した。

8.天体運動
 憧れの女の子と、言葉を交わしなが
ら一緒に歩けるなんて初めてである。
嬉しくて天にも月にも昇る気持ちで、
直ぐ結婚してもよいと思った。

 しかし気恥ずかしくて、私は女から
わざと遠くへ体を引き離したり、時々
触れるばかりに近寄って来たりしな
がら、女の回りを歩いた。その動きは
楕円に近かったから、人が見れば、恰
も太陽の周りを巡る天体運動に見えた
事だろう。

 一緒に居れる時間を引き延ばす為
に、普段よりずっとゆっくりした足取
りで坂道を登りたかった。いや、本当
を言えば道を後戻りして、坂道をもう
一度一緒にやり直したかった。

 ところが意地悪な事に、何故か女の
歩みが案外さっさと速くなるのであ
る。何もそんなに急がなくてもーーー
と思って、これには困惑した。

 急いで知恵を働かせた:女の言う高
倉町なんて、どうせ大したことはある
まい。少々のことなら、今日は女の家
の前まで回り道して帰ってもよい、と
思いついたのである。そうすれば、道
々長く一緒に居れるではないか! 

 これも私にしては画期的なアイデ
アで、小二と言えども土壇場になる
と色々知恵が湧く。無論女の家へ上が
るのではなく、玄関先でさよならを言
う積もりで。
 いよいよ潮見台方面と高倉町へ分か
れる分岐点近くへ来た時、思い切って
自分の考えを提案した。

 後になって思えばーーー、この提案
こそ後々何十年の長きに渡って、私の
人生を拘束し悪夢のように苦しめる結
果となるのだが、そんな事は夢にも気
付かなかった。
(つづく)

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2014/01/03
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