1.女の子
隠れた仕組みや謎を解明するのに、殆ど生涯の長
い時間の掛かかる場合があるものだ。私は七十だ
が、解明に少なくとも六十年以上の歳月を掛けた。
初めてその「女の子」に話しかけたのは、学校か
らの帰り路である。女も私も小学校二年、昭和二十四
年頃で余り昔の事なので女の名を忘れてしまった。
女は私と同じクラスで、当時五十数名の級友の中
で一番背が高く、綺麗だった。目が優しくて、短い
髪が下端でやや外向きにカールしていた。姿はその
ように目立っていたが、温和しい性格で、教室の隅
に何時も独りでいるような雰囲気があった。静かな
彼女が何となく好きで、私は遠くから眺めて憧れに
似た気持ちを抱いていた。
小二といえば、男女が気軽に遊びに交わったり言
葉を交わしたりせず、むしろ、そんな所を他人に見
られるのを気恥ずかしく感じ始める年頃。かといっ
て、互いに無関心であった訳ではない。体に触れて
みたいし、おしゃべりをしてみたいし、パンツも脱
がせてみたい。私も例外ではなかった。
(つづく)
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