＋＋＋パトロン探しといい、越後の女はしっかりして
いるねえ、流石に」
「ウフフーーー」

３６．三名

　私は自分のコーヒーをもう一杯追加して頼んだ。
「メールのやり取りで、僕以外からも反応があったか
いーーー？」
「資格の無い人も含めて意外とありました。でも貴方
のが一番爽やかな感じだったわ」
「爽やかとはーーー？　真面目という意味？　僕は真
面目過ぎて困る男だよ」

「デリカシーに欠ける人もいました。中には変に優し
過ぎる人もあって、気持ち悪いわ。貴方のメールが一
番正直で自然に感じたわ、年齢とバランスが取れてい
たしーーー」

「僕は大した返事を書いたとは思わないけれどーー
ー、論文テストに合格したのは、歳の功かな？ セフ
レ求む、がそんなに自然かい？」
「一番自然よ。それ以外はみんなウソだもの」
「アハハ、なるほど、お見通しだね」

「同じ言葉でも、もし若い人がセフレだなんて使えば
女性にもてない証拠よ。第一頭が少しおかしい。で
も、五十を過ぎた年配の男性が、特に人を束ねる立場
の人が使ったら、素敵！って感じになるわ」
「ふーん、女心は難しいもんだねえ」

「今日、貴方に会えて良かったと思うわ。こうしてお
しゃべりをしていると、まるで何年も前からのお友達
みたいな気分よ。気取りが無くてーーー。素敵という
意味、悪人じゃないわ」
「いや、悪人さ。美女と悪人ーーー。オペラ座の怪人」

「でも、貴女が求める「優良物件」は直ぐに見つかる
かなあーーー」
「パトロンは三名の積もりよ」
「ふうーん、会員制みたいだ。 会員みんなと仲良くな
るのかい？　つまりーーーセックス」
「そうなると思う、勿論別々によ。いけなかったか
しら？」

「「別々に」は当たり前だと思うけれど、それ
にしても、三名とはびっくりだ！」
「そんなにびっくりする事ないわ。 フフフ、教えて上
げましょうか、こんな時女の子はこう言うのよ。 ビッ
クリ、クリクリ、クリックリッ！」
　私は思わず笑った。

「珍しい事じゃないわ。ビックリしたようだから、私
の方が逆にビックリよ。 多分貴方の方が世間の常識か
も知れないけれどーーー」
「魅力的だけど、芸術系の人は違い過ぎるよ」

「パトロンは三名で、一名抜けると一名補充して何時
も三名を維持する積もり。 二人だと、どちらと会って
いても他の人に対して自分が浮気しているみたいな、
後ろめたさが付きまとうのよ。だけど、三人だと不思
議にそういう感じがしなくなるーーー」
「ふーん、経験者が語る体験的ルールなんだ」

「学生時代には、男の子の方でもその方が気が楽みた
いだった。多分私を支えるのに、一人で責任を負わな
くてもいいから」

（つづく）