＋＋＋干物の私も隅の方で、そんな話にケケケと遠
慮勝ちにニヤつくから、これも楽しみの一つになっ
ている。

（５）

　人畜無害な女風呂の仙人をただで利用する積り
か、時々恋愛問題の相談を持ち掛けられたり、不倫
のやり方を是非教えてくれとせがまれたり、５日間
も便秘なのよとかの健康相談も受ける。私は大学病
院の精神科医と内科医も兼ねている。

　不倫のやり方では、こっちもニヤニヤとヤニ下が
って、いやいや、元技術エンジニアらしく真面目に
鉄製の硬めの言葉を選びながら、「不倫のノウハウ
はかなり技術が高度なんだよ、特にダンナや彼にバ
レないようにやるには、それなりの修練が必要さ。
どう、一緒に研究しようよ。先ず僕みたいな代用品
を使って不倫の予行演習から初めなきゃーー」と、
そそのかしている。
　が、共同研究が未だ実現していないのは、残念で
ある。

　脱線したので、再び本題に戻る。
　先に言った通り、私自身は決してマッサージの練
習台にはならないが、女達は何時も志願して私の練
習台になりたがる。それも順番待ちだ。この点では、
確かに私は大もてである。

　なぜか私は手筋が良いらしく、コリを探り当てる
のが上手いらしい。毎晩自宅で配偶者を相手に予習・
復習を欠かさず、練習時間が多いせいだろうか。「我
が指先」は微妙な力加減で、何時もコリのポイント
にぴったりはまるのである。

　はまった時には、「ソコ！ソコ！ソコッ！ーー」
とうら若い練習台が黄色い声を上げて、「ソコ！」
を強調する。
　そんなに切羽詰ったように強調されると、こっち
は暗闇で脱がせた女の、ソコの場所が判らずゴソゴ
ソ探す時みたいに、何やらヘンな気分になってしま
う。だから、これもまた大いなる楽しみの一つなの
である。

　３０代の練習台の一人が私に背中を揉まれなが
ら、「素敵よ、その指と結婚したいわあ。そんな力
があるなんてーー、だったら、未だアソコも充分使
えるわね！」と、感嘆符を付けて言った。そうまで
言われちゃ、なに、「干物」だって黙ってやしなか
ったさ：「使えるかどうか、どう、今晩試してみる！？」

（つづく）