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物語は人の心を映す
2024年04月28日
テーマ:読書案内
『おおきな木』
(作・絵・ シェル・シルヴァスタイン/訳・村上 春樹/あすなろ書房 )
という絵本がある。
いつも木の傍らで無邪気に遊ぶ少年。それを見守る木。
しかし、成長とともに少年は、
木に「お金」「家」遠出するための「船」を要求する。
木は、少年に実を与え、枝を与え、ついには幹まで与え、切り株だけになってしまう。
それでも木は幸せだった。何もかも失い、年老いた少年を
温かく迎える。いつでも惜しみない愛を与える木。その日、その時、自分ができるすべてを少年に与える。それが幸福でたまらない。
村上春樹は訳者あとがきで言う。
あなたはこの木に似ているかもしれません。
あなたはこの少年に似ているかもしれません。
それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。
あなたは木であり、また少年であるかもしれません。
あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。
それをあえて言葉にする必要もありません。
そのために物語というものがあるのです。物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。
読む人によって受け取り方が大きく変わるのがこの「おおきな木」であろう。
 
少年に与え続け、すべてを失い続ける木に自分を重ねる人もいれば、少年に自分を重ね、誰かからすべてを奪いつくした過去を思い出し胸を痛める人もいるであろう。
 
原作者はアメリカ人なので、キリスト教的な観点から人間の原罪である、
「リンゴの木に手を出す」ということを題材にしているのかもしれないなど
単純で穏やかな絵と文の中に多くの解釈を読み取るひともいるであろう。
解釈にはならないが、ぼくは
日本の政治家の問題、さらにはロシアのウクライナ侵攻、中東問題なども考えさせられた。
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