筆さんぽ

人生はどんな状況でも意味がある 

2024年05月10日 ナビトモブログ記事
テーマ:筆さんぽ

Kさんがめずらしいオーストリアの白ワインを
もって訪ねてきた。
口にすると、青リンゴのようなフルーティーな味わいとともに、
ハーブ系のアロマを感じ軽やかに飲める。

飲みながら雑談した。
Kさんはビールと一緒に、
亡父の書棚にあったという、
フランクルの『夜と霧』をもってきた。

読んだことある?
いや、むかしはベストセラーだったから、
名前は知っているが、読んだことはないな。

Kさんは病を負って、車椅子生活となり、
毎日、監獄にいるようなものだとなげいていた。
フランクルもオレと同じなんだよ。

フランクルはウイーンに生まれ、
大学で精神医学の教鞭をとっていたが、
ナチスがウイーンに進駐してくると、
ユダヤ人であるという理由で、
彼は一家全員と共にアウシュヴィッツに送られる。
そして彼をのぞく両親・妻子のすべてが、
そこで非業の最期を遂げることになる。

生き延びたフランクルは、
戦後になって収容所での悲惨な体験を
著書にまとめて発表し、世界各国から
注目されるようになった。
日本でも『夜と霧』がベストセラーになったのである。

フランクは収容所で監禁されていたので、
Kさんは自分と同じだというのだろう。
そうはいっても、フランクはオレとちがう。
どうして?

収容所では、極限状態でも人間性を
失わなかった者がいたというんだ。

囚人たちは、ときには演芸会を催して
音楽を楽しみ、美しい夕焼けに
心を奪われたそうだ。

フランクルは、そうした姿を見て、
人間には「創造する喜び」と
「美や真理、愛などを体験する喜び」が
あると考えるようになるんだよ。
なるほど、Kさんの好きな世界ではないか。

フランクは、こうも言っている。
人が生存する意味や目的を
明らかにしようとするとき、
その意欲・動力を自己の内部に
求めてはならない。人は自分のために
人生の意味や目的を求めるのではなく、

それ以前に自分が外の世界から
何を求められているか知らなければならない。
フランクルは「人生はどんな状況でも意味がある」と
説いているのである。

そうだな、生きがいを見つけられずに
悩む人たちや、先が見えない不安の中に
生きる人たちへのメッセージになるな。

オレも、「創造する世界」に浮遊してみるよ。

Kさんは、ビールをやめて、ぼくが好きな
スコッチウイスキー「タリスカー」を飲んでいた。
タリスカーはスコットランドの
スカイ島で蒸留されたシングルモルトで、
「唯一無二の個性的な味わい」といわれる。

オレたちも、そうありたいな。

ロシアのウクライナ侵攻や
イスラエルとパレスチナの問題のなかの
兵隊さんたちのことを考えた。



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