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筆さんぽ
父を語るのは、やっかいである
2024年02月13日
テーマ:筆さんぽ
その日、肌を刺す北風がふいていた。
父が鬼籍に入ったのは、空気までも冷え切った寒い日であった。
父を語るのは、やっかいである。ぼくには兄がいる。兄は、父によく殴られたときく。縁側から突き落とされたと、兄はいまも残る頭の傷をみせてくれた。しかし、父がぼくに手をあげたことは、一度もない。
つまり、兄は盛りのころの父を見ており、ぼくは盛りを過ぎた父と長かったということになる。すると、それぞれが抱いている父の姿にへだたりがある。大人になってから、ある夜兄と酒を飲んでいてそれを知った。
兄に「親父は覇気のない男だ」といった意のことを言ったとき、兄の話をきいて、ぼくは父に詫びたいような気持ちがこみ上げた。しかし、その時もう父はいなかった。
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