読書日記

『藤井聡太論 将棋の未来』 <旧>読書日記1537 

2024年01月05日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


谷川浩司『藤井聡太論 将棋の未来』講談社+α新書

今や、この本の著者である谷川浩司9段よりも対象となる藤井聡太2冠の方が世間に知られているだろう。中学生棋士としてデビューした棋士は現在までに5人いる(古い順に加藤一二三*、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太 段位など省略、*は引退棋士)。その中で一番新しく、そして若い藤井2冠だけがまだ棋士の最高位とも言える名人位を獲っていない…言い換えれば、藤井以前に中学生棋士としてデビューした棋士はすべてが名人となっている。

そして、藤井2冠は棋士になってからまだ5年目であるのに数々の棋界記録を書き換えてきた。最年少4段に始まり、最多連勝、最年少タイトル保持者、最年少9段などが主なものであるが、その藤井2冠が達成できるかどうか興味を持たれているのが最年少名人である。名人になる為には棋士になってから最低でも5年かかる。現在19歳の藤井2冠も現在B級1組に在籍しているので早くてもあと2年かかる。で、その最年少名人の記録を保持しているのが著者の谷川浩司9段であり、記録は21歳2ヶ月である。

さて、本書は谷川9段が藤井2冠を慈しみながらその凄さについて述べたものであり、AI時代に入った将棋界の将来を見通そうとするものである。

はじめに
第1章 進化する藤井将棋
第2章 最強棋士の風景
第3章 不動のメンタル
第4章 「将棋の神様」の加護
第5章 「面白い将棋」の秘密
第6章 AI革命を生きる棋士
第7章 混沌の令和将棋
おわりに

面白いのは藤井将棋を評しながら、著者の考え方が所々に出てくることである。例えば、棋士の実力と実績を最も正確に表しているのは、勝ち数から負け数を引いた勝ち越し数だと私は考えている。(p.32)とか、棋士は「勝負師」と「研究者」と「芸術家」の三つの顔を持つべきだ、というのが私の年来の持論である。(P.60)

三つの顔の話は以前にどこかで聞いたこともあるのだが、勝ち越し数が実力と実績とを正確に反映するというのはなるほどと思った。勝率もある意味で短期間の実力の反映である。だが、勝ち越し数1位は羽生9段の852(1481勝−629敗)、第2位は大山15世名人の652(1433勝−781敗)。第3位が中原16世名人の526(1308勝−782敗)、とタイトル獲得数と同じ順番である。ちなみに著者の谷川9段は463(1346勝−883敗)でタイトル獲得数と共に第4位。藤井2冠は173(213勝−40敗:2021年3月末)でたった4年半でこの数字は立派なものとの著者の評価である。
(2021年7月10日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





掲載されている画像

上部へ