筆さんぽ

背中 

2023年12月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

図書館の入口のロビーのベンチに座っている。

ロビーは、目測幅10メートル、長さ30メートルは
あるだろうか、通路にもなっている。
ロビーの両脇には、ベンチが並んでいる。
図書館で借りた書籍を開いている人、
軽食を食べている人などさまざまである。
ベンチ前は通路になっているので、
ベンチの人は通路に背を向けて座っている。
ぼくは、通路に向かって座ったので、

前のベンチの人の背中を見ることになる。
正面は初老の男性で新聞を読んでいるようだ。
赤鉛筆を手にしているので競馬新聞だろうか。
グレーの、ちょっとくたびれたジャケットは
やや猫背になっていて、左肩がすこし落ちている。
その隣は背筋が伸びた、おそらく中年の女性で、
髪の毛がどこまで艷やかなので、もっと
若い方かもしれない。濃い赤紫の背中は
気分よくと伸びて、姿勢よく本を
読んでいる。
もしかして小川洋子を読んでいる
のかもしれない。いや、もっと若い感覚の、
三浦しをんや、有川浩だろうか。

その隣は、スマホを手にし
髪を染めた若い男性。背中を見ると
華奢で線が細いが、気持ちのよい曲線で、
茶髪もきれいな色に染めてある。
彼には村上春樹の初期の
『風の歌を聴け』を
読んでほしい。あの洗練された
気分を気に入ると思う。

人は、自分の背中を見ることができない。
他人の背中は見て想像を
めぐらすことはできても、
自分の背中は見えない。

ぼくは、ガラスに自分の背中を向けて
首をよじって、自分の背中をみたが、
これはガラスに映った背中。それでも、なんだか重く思えた。

人は、自分では見えないものを
背負って生きているのだなと思った。



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