読書日記

『人はなぜ同じ間違いをくり返すのか』 <旧>読書日記1520 

2023年11月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


野崎昭弘『人はなぜ同じ間違いをくり返すのか』ブックマン社(図書館)

副題に、数学者が教える「間違い」を生かすヒントとある。

冒頭で、「間違い」とは、いくつかの選択肢があって自主的に選べる場合に、そこで「最適でないものを選ぶ」ことという著者による定義が示される。従って、選択肢が無くてその行動・行為を選べないときには「間違い」は起こらない。強制された行動もまた「間違い」では無い。よって「間違えることは人間の特権であると言う。

つまり、間違いには良い間違いと悪い間違いがあり、間違いを反省して同じ間違いをしない様になるのが良い間違い。最終的に大きな間違いを起こさないようにする。というのが著者の言いたいことの要である。

しかし、学生時代は間違えても良い時であるにもかかわらず、今の学生(だけでは無い)は点数至上主義に陥っていて、結果だけを見るようになって間違いを恐れる。そこで失敗(=間違い)を恐れすぎて、ある意味では安全な「正解」の暗記を求めてしまう。特に大学入学までの試験を乗り越えるだけであれば暗記だけでもなんとか乗り越えられる、と著者は断じそれゆえにこの風潮は止まらないが、著者はそうではなく、「暗記では無く、根本を理解する」ことが重要、すなわち考える力が重要であると説き、失敗したプロセスの反省が必要と説く。

となると、「知らない」と「判らない」は違ってくる。知っているだけでは頭が良いとは言えない。結局、応用力の問題でもあるから。

途中で著者は間違える人の7パターン。落雷型(何かひらめいたらすぐそれに飛びつく:練習、実践不足)、猫のお化粧型(同じことをくり返してばかりで前に進まない)、メダカの学校型(群れるのが好きで付和雷同になれている)、這っても黒豆型(頑固一徹で自分の間違いを認めようとしない)、馬耳東風型(自分勝手な理屈をつけて他人の意見を受け付けない)、お殿様型(下々の痛みや苦しみが理解できない)、即物思考型(抽象的なことを考えるのが大の苦手:丸暗記を求める)を示すのであるが、この類型分けがどうも思いついたままに書いただけの恣意的な感じがする。それと、このような間違いの類型を人の性格に絡めて考えようとし、どのように対処すべきかを説くがこれがまたうまく当てはまらないのでは無かろうかと思った。

目次
第1章 人は間違える動物である。
第2章 「間違い」の本質を探る
第3章 「間違えること」の意義
第4章 「間違い」から何を学ぶか

「どうして同じ間違いをくり返すのか」という問いについて、間違えた時の反省の仕方が悪いから、とも言いたいようである。また、間違える人の7パターンでも答えているつもりなのであろうが、読み終えると、どうにも隔靴掻痒感が生じる。

うーん、例えばであるが、間違える部分を次の様に分類すれば良いのではないだろうか。
1.問いの意味や目的を誤認識する。
 ア.知識が無くて問いの意味が判らない
 イ.意味を早とちりする
2.問いは正しく捉えているが、考え方(推論)が違っている。
 ウ.推論をするための基礎が誤っている。
 エ.推論が誤っている。
 オ.推論は正しいが、結論を読み違えている。

(自分で)とことんまで考えることが重要といいたいことは判るし、現代のすぐに答えを求めるという風潮に対して憤りを感じていること・・これは私も賛成する・・も判るけれど。お殿様型の間違い、すなわち、問いに対して見当外れの答えを出し、他人に指示するということをこの本自体が犯しているような気がしてならない。

それとは別に(勝ち負けを争う)ディベートは役に立たないと断言しているのは面白い。
(2021年6月6日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





掲載されている画像

上部へ