読書日記

『ラジオ・ガガガ』 読書日記194 

2023年05月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

原田ひ香『ラジオ・ガガガ』双葉文庫

この本を読んで、ご多聞に漏れず私も深夜放送を聞いていた時があったなぁ、と思いだした。それは高校三年で大学受験生の時である。とは言っても、人の声が聞こえると集中力が削がれる(ナントイウ ムジュン ダロウカ)方なので聞くのはもっぱら「ジェットストリーム」だけであった。

本書はそんな深夜放送を聞く/聞いていた人たちを描く短篇集である。題名はクイーンの「Radio Ga Ga」をもじったものらしい。私は雑音の「ガガガ」かと思っていた(笑)。深夜に雑音のまじったラジオを必死に聞いているというイメージだったのだが。

内容紹介が不思議である。

喜びも哀しみも、いつもラジオが傍にいてくれた。
夢破れ、逃げる旅路の果てで聴いた【オードリーのオールナイトニッポン】。
ケアハウスで暮らすラジオ歴35年の老女は、今夜も【深夜の馬鹿力】に胸をときめかす――など、
実在する人気ラジオ番組に耳を傾ける人々の姿を描く連作5篇。

何が不思議であるかを書くと本書は第1章「三匹の子豚たち」、第2章「アブラヤシのプランテーションで」、第3章「リトルプリンセス二号」、第4章「昔の相方」、第5章「We are シンセキ!」、第6章「音にならないラジオ」いう章題になっているが、実際には独立した短篇を集めたものであり、書き下ろしの本なので雑誌に連載された「連作」ではない。何より(気づいていただけただろうか)連作5篇のはずが実際には6篇なのだ。

「三匹の子豚たち」はケアハウスに入所した未亡人の話。「アブラヤシのプランテーションで」は大学卒業後何物にもなれないまま10年近く燻っていた男がラーメン屋を始めたシンガポールから一人こそこそとバスに乗って逃げ出す姿が描かれている。「リトルプリンセス二号」は秘かにラジオドラマのシナリオライターを目指す母親とつらい不妊治療の結果生まれた娘の話。幻想感がある。「昔の相方」は売れっ子となった芸人を食えない時代に世話し続けた夫が「バカな奴」と仇で返されている事を知った女性の悲しみ、を描く。「We are シンセキ!」はラジオ相談室という番組をきっかけにしてスクールカーストを描いたもの。「音にならないラジオ」は採用されないまま百本以上のプロットを書き続け「いつか音になる日」を待ち続けるシナリオライターの起こした事件。

総じて言えば孤独をラジオが癒やしてくれた、という月並みな言葉に落ち着く話ばかりだが出来は良い。ただ、難点が一つある。というのは文中で現役(執筆時点で)の実在人物がよく登場すること。つまりその時点で、有名でそれなりの影響力のある、言い換えれば読者がイメージしやすい人物を使うこと。私はそれは時代を追うことと感じ、その為に作品は価値の持続ができないと感じるので好きでは無いのだ。
(2023年4月17日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





掲載されている画像

上部へ