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吾喰楽家の食卓

三遊亭円丈師匠の思い出 

2023年05月06日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

通常、寄席の定席は、事前に演題を公表しない。
その日の客層により口演する噺を決めることや、先に高座へ上がった落語家と噺が重ならない様にする為と言われている。
噺に入る前のマクラを聴いていると、何を口演するか分かることもある。
新作落語は、名前の通り新しく作った噺だから分からないことが多いけど、昔から演じ続けられている古典落語は、可なり分かるようになった。

初めて行った池袋演芸場で、4月下席の江戸家猫八襲名披露興行を見た時のことである。
林家彦いち師匠が新作落語を口演したが、演題が分からなかったので、終演してから落語に造詣が深い同行者に訊いたら、『遥かなるたぬきうどん』だと教えてくれた。
三遊亭円丈師匠が作った落語だと想像したけど、前に読んだ「円丈落語全集」(三遊亭円丈著)に載っている噺とは、帰宅するまで気が付かなかった。
今、手元に全集の第1巻と第2巻があるが、第2巻に収録されていた。

初めて円丈師匠に興味を持ったのは、雑誌「サライ」を読み始めた頃だから、30年ほどは経っている。
師匠は、その雑誌で連載を担当し、自ら撮った狛犬の写真を紹介していた。
それを読んで狛犬の魅力に目覚め、師匠を真似て神社通いをした時期もあった。
長いこと「サライ」を愛読していたが、読まなくなってからは、師匠との関わりが途切れた。

それから20年ほどを経て、円丈師匠が円窓師匠と共に、「銀座風流寄席」の宴席で我々の話題に上がった。
三遊亭円楽(5)師匠は、惣領弟子の鳳楽師匠(風流寄席の演者)に圓生の名跡を襲名させようとしたが、自身の病死で暗礁に乗り上げていた。
円楽師匠の弟弟子である円窓師匠と円丈師匠は、直弟子の自分たちが居るのに、孫弟子が襲名するのは筋が通らないと主張し、鳳楽師匠が圓生を襲名することに異を唱えたのだ。
鳳楽師匠が、「師匠(円楽)が、もう少し長生きしてくれたら」と言ったのを、一度だけ聞いたことはあるが、決して円窓師匠や円丈師匠のことを悪くは言わなかった。

数年後、鳳楽師匠は、「語句さん、三人(円窓・円丈・鳳楽)で話し合ったけど、三人の誰も圓生を襲名しないことにしたよ」と、吹っ切れた顔で私に言った。
程なく、このことは一部のマスコミでも取り上げた。
このことに関係ないが、その頃から、国立演芸場で円丈師匠の高座を観る機会が増えた。
余り好きではなかった新作落語も、観慣れると面白くなった。

同じ頃、円丈師匠は、「円丈落語全集1」(2016年9月4日 初版第1刷)を刊行し、国立演芸場で師匠から直接に購入した。
全集の帯には「新作落語に革命を起こした男・三遊亭円丈・自選作品全集・全5巻で遂に刊行開始!」と、記載されていた。
続いて、「円丈落語全集2」(2017年9月3日 初版第1刷)だが、帯は「・・・・・待望の第2巻で遂に完成!」となっていた。
第2巻の“はじめに”には、「当初は全5巻を予定・・第3巻までは絶対に・・4巻も何とか・・第5巻までは無理・・」とあったが、事情は分からないけど第3巻は刊行されなかった。

円丈師匠の高座を最後に観たのは、2019年の国立演芸場9月中席初日で口演した『金さん銀さん』で、見事な名古屋弁を聞かせてくれた。
その後、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、師匠が2021年11月に心不全で他界(享年76歳)するまで、高座を観る機会がなかったのを残念に思っている。
多くの新作落語を残し、若手の新作落語家に大きな影響を与えた功績は素晴らしい。
半年ほど経つと三回忌を迎えるのに先立ち、師匠の思い出をまとめてみた。

合掌

   *****

写真
2016年9月13日(火)撮影:国立演芸場中席終演後の2階ロビーにて
2023年5月5日(金)撮影:円丈落語全集1・2



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