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司書生活で最高の思い出
2020年04月22日
テーマ:仕事
人間関係とは別の問題を抱えている職場も、けっこうあるのではないかと推測します。
図書館にも固有の悩ましい問題があり、真剣に取り組んでいた僕はかなり悩みました。
そんなある日、幼児向け「お話し会」を開くと、ふつうは幼児にお母さんが付き添うのですが、4才くらいの女の子だけは独りでした。
他の司書が素話や絵本の読み聞かせをして、最後に僕が『幸福な王子』の紙芝居を。
ご存知の方も多いでしょうが、博愛と自己犠牲の精神を分かりやすく伝えてくれる、とっても良いお話です。
──王子の豪華な銅像が町の貧しい人たちを哀れんで、ツバメに言いました。
「わたしの目は宝石だから、あの人たちがパンを買うために運んでおくれ」
そうやって冠なども全部、人々にあげてしまいました。
やがて銅像はみすぼらしくなり、ツバメも死んでしまいました。
でも王子もツバメも、神様に召されていったのです──。
「――おしまい。じゃあみんな、また来てね」
手を振って片づけを始めると、独りで聞いていた女の子が僕のところへ来て。
つぶらな瞳で僕を見上げて言うのです。
「良かった」
お母さんが「図書館の人に『良かった』って言っておいで」というケースはたまにあるのですが。
幼児が自分から感激を伝えに来るなんて、後にも先にもその時だけでした。
女の子はよほど心に響いたのでしょう。
司書として納得できないこともあった二十一年間の勤務で、一番喜びを感じた瞬間です。
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