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吾喰楽家の食卓

熱演中の円楽 

2019年08月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

国立演芸場八月中席は、二日目、五日目、六日目(夜席)の三公演を見た。
三遊亭円楽が、十日間、ネタ出しでトリを勤めている。
『唐茄子屋政談』、『ねずみ』、『死神』、『藪入り』、『浜野矩随』から一席、日替わりで口演することになっている。
この企画は、円楽が病気を得る前から決まっていたそうだ。
入院中の病院から、外出許可を貰って高座へ通う身になると、ネタ出しの公演は、中々、大変らしい。

五日目のマクラでは、「元気な時は何でもないと思っていたが・・・昨日は予定にない噺をした」と、ネタ出しの大変さを語っていた。
後で調べたら、桂米朝作『一文笛』を口演したのだ。
新しい噺ではあるが、古典落語として通用している、名作と言える噺である。
幸いなことに、今回の公演では、『ねずみ』、『藪入り』、『唐茄子屋政談』と、別々の噺を聞くことができた。
初日に口演した『浜野矩随』も聞いてみたかったが、「どの噺の代わりに」と訊かれたら、返事に困る。

今回、楽しんだ噺の長さは、『藪入り』、『ねずみ』、『唐茄子屋政談』の順に長い。
持ち時間は一定だから、マクラの長さで時間を調整することになる。
マクラで口にしたことは、言うまでもなく、自身の病気のことが多かった。
「この公演を励みに、治療に専念した」と、「リハビリのつもりで、聞いてくれ」は、毎回、言っていた。
また、声帯は筋肉だから、使わないと声が出し難くなるそうだ。

『藪入り』を口演した日は、マクラが長かった。
その中で、先代円楽に入門した経緯は、興味深かった。
先代の総領弟子である鳳楽は、当時は楽松と名乗り、立前座として楽屋で忙しくしていたそうだ。
その為、師匠の身の周りを世話する人が必要になり、「かばん持ちをしてくれ」と、直々に誘われたという。
その後、かばん持ちではなく、弟子にすれば給料を払う必要がないと、入門させられたらしい。

■ねずみ
今年の四月中席は、“桂歌丸追善”として、桂米助、三遊亭小遊三、春風亭昇太、三遊亭円楽、三遊亭行楽の五人が、交替でトリを勤めた。
円楽が中入りを勤めた五日目と、トリの九日目を見ている。
トリの日は、『ねずみ』を口演しているが、彼にとって特別の意味がある噺かも知れない。
演じ方に、独自の工夫がある。
仙台一の宿である虎屋の主だった卯兵衛は、物置小屋のような粗末な宿の鼠屋を、子供と二人で営んでいる。
五年前に女房を亡くしたが、後妻と番頭に騙され、虎屋を乗っ取られてしまった。
その経緯を鼠屋の客である、左甚五郎から訊かれるままに話す場面が、他の演者と異なる。
簡単に言うと、実況中継である。
会話に迫力は増すが、気を付けないと、不自然になり、聞き手の頭が混乱する。
一概に良し悪しは言えないが、円楽同士を比べると、四月よりは今回の方が不自然さは少ないように感じた。

あらすじ
http://ginjo.fc2web.com/231nezumi/nezumi.htm

■藪入り
三十分足らずの噺なので、マクラは十五分を超えていた。
入門時の経緯を十分、藪入りの説明を五分ほど遣ってから、噺に入った。
奉公に出た一人息子が、三年ぶりに里帰りする。
その前夜、寝られない父親の様子は、何とも微笑ましく思いながら見ていた。
親子の情愛が良く出ている噺なので、いつもなら途中から目が熱くなるのだが、何故か・・・
話し手の問題なのか、聞き手が悪いのか、よく分からない。
この日、襟元に付けたマイクに気が付いた。
二日目も使っていたのかも知れないが、記憶にない。
その為、親子の会話が、元気すぎたのが影響しているかも知れない。

あらすじ
http://ginjo.fc2web.com/124yabuiri/yabuiri.htm

■唐茄子屋政談
勘当された大店の若旦那が、食うに困って身投げをしようとして、偶然に通りかかった叔父に助けられる。
ところが、甥っ子と知った叔父は、助けるのを止めようとする。
「お願いです。助けてください」と、二度ほど言ったが、「何でもします」とは言わなかったような気がした。
言っていたとしたら、言い方が弱い。
翌日、叔父が段取りした唐茄子売りを、若旦那が嫌がる場面で、そのセリフが頭に入っていないので違和感を覚えた。
若旦那が、吉原田圃で昔を懐かしむ場面は、その情景が目に浮かび、非常に良かった。
後半の騒動の様子も、大熱演したと思う。
しかし、首を吊ったおかみさんが、奇跡的に助かったことや、その後の生活のことを、もう少し明確に語った方が、ハッピーエンド感が増し、聞き手は安心する。
重箱の隅を楊枝でほじくるような感想になったが、今回の三作の中で一番の出来である。

あらすじ
http://sakamitisanpo.g.dgdg.jp/tounasuyaseidan.html

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写真
8月17日(土)の昼餉(フィジリのトマトソース)と夕餉(カツオの刺身・マグロの味噌漬)



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