十牛訓ー１７　＜６－騎牛帰家＞⑤/５　終

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シニアの放課後

2018年09月11日ナビトモブログ記事
テーマ：中村天風＜十牛訓＞

　もっとわかりやすくい言葉で言えば　できないことをできた格好にしちまうんだ　頭の中で。そうすると人間が人間らしく本当に生きられるよ。人間だけなんだよ　考えられるのは。犬には考えられないんだ。
　だから　＜ああ　私はそんなことはできません　できません＞はいけないんだよ。本来の面目たる心身統一を心から失っちまうことになるもん　そうなると。＜できない＞って意味は＜ありません＞ということなんだから。　＜持ってません＞ということなんだ。そうだろう。
　そんなこと　幼稚園の子供にも教えるような言葉なんだけども　さなきだに世の中の人の多くは―あなた方もその仲間に入ってるかもしれないから　考えなきゃいけない―なんとなく定まりのない心もちで　ただもう物質だ　金だという外物にのみとらわれて　そしてその日暮をしてるのが当たり前だと思ってる。こうやって　こういう話を聞いてる今でも　＜もう１２時過ぎたなあ。今日もまた１時ごろになるかなあ。帰りには何を食ってやろう＞なんていうようなことを考えてる人もありゃしないかい　おい。
　それを考えずにいる人が幸福な人なんだ。現在を楽しんでいる人。私なんか　もし現在を楽しむ気持がなかったらばだよ　毎日毎日　同じこと言ってるんだもん　たいていの人だったら嫌んなっちまうでしょう。それが　ただもう現在　現在　現在が本当に楽しみなんだ。こうやってあなた方の顔を見ながら＜ああ　この人にこの人　ああ　この人も私のいうとおりにやれたわ＞ということを考えながら。
　だいいち考えてごらんよ　世間の人間があなた方の心と比較してどんなに汚いか。世間の人間の心の中には　しじゅう不平不満のみがスイッチ入れた洗濯機みたいにグルグルなってんだもん。汚い心がもう絶えず心の中の姿になってる。そこへいくと　あなた方となると　心の中に何の不平もなきゃ　不満もなく　真に純一無雑な　きれーいな気持で生きていかれる。生きている。それを考えてごらんなさい。それが騎牛帰家だもん。

　十牛訓六　＜騎牛帰家＞　終

～続く～