十牛訓ー１６　＜６－騎牛帰家＞④/５

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シニアの放課後

2018年09月10日ナビトモブログ記事
テーマ：中村天風＜十牛訓＞

　私が人糞もたれず　屁もひらず　生まれてから今日までピカーッとダイヤモンドみたいな光をもってる人間だったら　あなた方　ついちゃこられないよ。幸い同じような人間だからついてこられるわけだろう。皮相的に考えると　それがあべこべに考えられるかもしれないが。
　とにかく　＜らしくせよ＞という言葉はありがたい言葉だと思って　らしくないことをしないようにしなきゃいけないぜ。人間だから　人間らしく生きなきゃいけないのよ。ときどき獣らしくなっちまう。僕も　ずいぶんそりゃ今までいろんなことやってきたけど　現在は人間らしくないことはしませんよ。そこへいくと　あなた方は勇敢というのか　無頓着というのか　時どき犬や猫や狸や狐のようなことをやる場合がありゃしないかい　そんな顔してながら。
　人間には現在に満足しないという自然性が心の中にあるんだ。これが尊いんだぜ。それをあなた方　すぐ尊いことを悪いほうに回しちまうからいけないんだよ。現在に満足しないといういう心は　いつまでたっても　悟りを開こうと　開くまいとあるんだよ。その現在に満足しない心を　悪い方で満足しようとするからいけないんだ。それをいい方へ振り向けかえて　そして初めてそこに本当の進化と向上というものができるわけなんだ。
　だがしかし　注意したい問題がここにもある。
　いくらね　進歩と向上とを現実にしたいためにと　今度の三日目に開いた＜理想の摩訶力＞を自分のいちばんの心として　＜そうか　気高い理想を心に描くことか＞と　理想ばかり描いても駄目だ。現在ただいまの一歩をむなしくフワーッとした考え方で過ごしちゃって　いたずらに理想の達成のみを欲求するのは間違いもはなはだしく　結局は夢に終わる恐れがあるよ。
　もう少しわかりやすく言うと　本当に理想を貫徹せしめようには　まず現在の　いいか　すでにこうしてまざまざと自分の今ある人生を　もっともっとよりよき人生にかたちを変えさせていくことに注意しなきゃ駄目なんだ。ああなりたい　こうなりたいとばかり考えたって駄目なんだぜ。
　しょっちゅう私はこういうことを言ってるじゃないか。病になってる者は　病が治りたいと思う気持よりも　現在もうすでに病が治った気持になりなさいと。それがね　どうも古い会員の中なんかで受け取れないやつがあって　
　＜おまえ　いま忘れなきゃ駄目だよ＞と言うと
　＜忘れると治りますか＞と言うんです。
　だから
　＜忘れた時に治ってるじゃないか。おまえ　何を今まで聞いてたんだ＞と小言いってやるんだけども
　そうしないと　本当の進化と向上というのはできないんだよ。ただ理想のみを向こうのほうに掲げておいて　そして現在の一歩一歩を考えないで　理想の火と炎を燃やしたって　そりゃ駄目だよ。ただ向こうで燃えてるだけだもん。だから　今も言ったとおり　理想の実現　成就というものは　現在の現実をパッと握って離さないことなんだ。そうして　しょっちゅう＜可能に　可能に＞と　観念のなかでは可能にしちまわなきゃ駄目だ。

～続く～