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シニアの放課後

十牛訓ー15 <6−騎牛帰家>B/5 

2018年09月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<十牛訓>

 だから <私も天風先生のお弟子になってもう10年 ほんとにばかだと思ってないんだけど 何でこうわかったことができないんだろう。ばかでないからできないのかしら。ばかだからできるのか どっちだろう>なんて思ってる人はようく考えなさい 胸に手をおいて。明恵上人じゃないけれども その結論はきわめて簡単。らしくしなさい。心身統一法を学んだら 学んだものらしくしなさい。そうすりゃすぐできるんだ。難しいことは何もといてやしないんだもん。
 私でさえできるんだもん。これは私みたいなわがままな―私のわがままってきたら とびきりのわがままなんだからね。
 何しろ大名の一門に育った人間なんですもん。わがままも これくらいのわがままはないんですから。あなた方ね 昔の大名なんて知らないだろうけれど そらもう仁義も道徳も倫理もありゃしませんよ 大名なんていうのは 他人のかかあだろうが 何だろうが あれが好きだから連れてこいと言やあ それで連れてこさせてたんだから。
 私はまあ その時分子供だから いくら早熟でもそこまではしなかったけれども。けど やっぱりね それに近いことをあれこれと 平気でやってたもんだ。今の人がその当時の私の日々のすべての生活を知ったらば そらもう そんなものの教えを聞いてるのかいと思うくらい わがままな男だった。
 それがどうやらこうやら とにかくあなた方をお導きすることのできるような人間になりえていやしないか。もっとも頭山先生は だからいいんだといってくれたけど こらまあ 頭山先生は かわいい子供が悪く言われるのが嫌だから ひいきして言ってくれたのかもしれない。頭山先生は前講のとき しょっちゅうそう言いましたよ。
 <この天風ってやつはのう 悟りを開く前までっていうのは もう始末にいけない もう そりゃ 悪人とはいえないけども 悪者だった>と―同じことですよ こりゃ。
 <そのかわり 話を聞いてござれ。酸いも甘いもかみわけてるから。わしとこの人間とは30 年が違うが 30 年が違っても この子供のいうことがわしは本当に感心だと思うことがある>と こういうんです。
 大岡越前守が―大変なところへ話しがいってるよ―ご承知のとおり 田舎奉行から江戸町奉行になったとき すりが非常に盛んだった。歴代の奉行が困った問題だ。ところが 将軍吉宗も知恵者であった。
 <何とかせんか>
 <かしこまりました>ということで 大岡越前守 いきなり すりの親分をすりの取締にしたっていうんです。泥棒に泥棒の番人をさせるとはなにゆえだとみんなが言ったというが それですりの数がピタッと減っちゃったという。やっぱりその道はその道を知った者から説かせるのがいちばんいいのです。

〜続く〜



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