メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

シニアの放課後

<心に成功の炎を>78 

2018年07月06日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 延髄というものは 脊髄の上 小脳の下にある。脳髄組織の一番下にあるわけだ。盆の窪と称しますね。盆の窪 これが延髄の存在場所だと思っていてよろしい。
 そして 生物学のほうじゃ 延髄を脊髄の延長だといってます。そんなものは学者の言うことですから どうでもいいとして 小脳と同じく 非常に程度の高い反射作用をもっている。そして ある程度まで交感神経系統の作用を支配する。したがって 肺や心臓や血管の運動 または内臓のいろいろな器官の活動を支配している。
 心筋梗塞なんていうのは 心臓それ自身が悪いんじゃないんだぜ。お医者さんが 心筋梗塞で呼吸が止まっちゃったっていうけれども これは結局要するに 延髄のほうからきた故障です。延髄の働きが鈍っちまうとそうなる。
 延髄は大脳や小脳とややその趣を異にして 普通の場合 意識的にこれを作用せしめることは絶対にできません。それは意識領域の中にあるもんじゃないんだもん。だから 普通の場合にはこれはどうにもできない。小脳だけは 大脳の意識状態によって しょっちゅう相関作用をもっているけれども 延髄は直接的には大脳からの支配を受けない。

 次は脊髄ですがね。頭のてっぺんからしっぽの先までが あれが脊髄。しっぽがあるんだぜ みんな。今夜お風呂へ入って見てごらん。ただ 出てないだけなんです。肛門の後ろのほうの骨がね 昔のしっぽのあとなんです。
 私はねえ ピテカントロプスエレクトス以来の あの毛の生えていた時代の毛むくじゃらの人間の先祖というのはしっぽがあったろうと思うんです。とにかく この脳に連結して 長い骨の束になったのが脊髄。
 だから 延髄が脊髄の延長だといわれるのも無理ありませんよ。そして この脊髄から出ている神経が 肉体の隅の隅まで行き渡ってるんだよ。だから脊髄というものは肉体にある各種の神経と脳髄との中間にあって 両方を連結させてるものだと こう考えていいでしょう。

 それから とくに記憶しておかなきゃならないことは 神経の中に 輸入神経と輸出神経というものがあります。
 輸入神経というのは 体の各部分から神経の中枢であるこの脊髄に向かって ある衝動やショックを伝える役目を持っているのが輸入神経。それから輸出神経というのは 神経の中枢から体の各部分に動力の衝動を送り出す役目を持っているのが輸出神経。
 <あ 痛い>と思って汗を出すのは 輸出神経のほうなんだ。何かやろうとして手を出すのは輸入神経。わかったろ。だから 俗にいう感覚神経というのは輸入神経 運動神経が輸出神経だと大ざっぱに考えても間違いないでしょう。
 もっとも 体の中に輸入神経と輸出神経との二つの作用を同時に働かす神経もあります。そんなことは素人として知っておく必要はない。
 いずれにしても 脊髄の中にある神経節は 体の中の輸入神経の感覚的衝動を受け入れて また一方 輸出神経を通じて 動力 衝動を体の各部門に送り出す根源となっているといっていいだろう。
 たとえば われわれが蚊や蜂のようなものに刺されたとする。いいかい?すると 思わず手を引っ込めるでしょう。意識的に引っこめる? <あ 蜂が刺しやがった。ああ 痛え 引っこめよう>と思って引っこめるんじゃない。パッと引っこめちゃうね。
 これは第一に輸入神経を通じて 痛いとかかゆいとかいう感覚が脊髄の輸入管にパッと感じる。すると脊髄神経節は いちいち大脳にお断りしないんであります。大脳に挨拶しないで 突然 物の声に応じたように パッと引っこめちゃう。そして <引っ込めろ>と輸出神経に命令を下すから パッと感じると パッと引っこめる。
 だから 輸入神経に故障が起こるとか病気でやられると たとえ足や手をたたきつぶされても なんらの痛みも感じない。だから 外科の医者は あの麻酔剤をかけて そして輸入神経の作用を痺らせちまう。局部麻酔なんかを受けてるときには 他人の足や手の手術を見てると同じように 自分の体を切られているのが 見ながらわかってるじゃねえか。もっとも 気の弱い人は平気で見てられないかもしれないけれども。
 反対に今度は輸出神経の方に故障が生ずると よしんば焼け火箸を当てられても その熱さは感じても 引っこめることができないんだ。よく中気病みが留守番をしていて焼け死んだなんてことがあるだろう。さぞ熱かったろうと思うね。こたつに入ってて焼け死んだ人を 私 いっぺん見たけど 熱い 熱いと思っても 引っこめることができないんだから 足を。そら恐ろしいよ。熱いのを知りながら死んじまうんだからね。

―続くー



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





上部へ