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シニアの放課後

<心に成功の炎を>79 

2018年07月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 それからもう一つ記憶すべきことは 脊髄神経の作用の一つに反射神経運動というのがあるんだ。この反射神経運動というのは 脊髄神経の中に潜在する隠れている力で 無意識的に筋肉運動をおこなう。あるいは内臓の運動を引き起こす作用なんだ。
 たとえばよく寝てる人の足をくすぐったりする。すると その人は<あ くすぐられているな>ということは知りゃしませんよ よく寝てるから けれども くすぐられりゃ ひっこめますよ。脳の直接の命令を受けなくても そういう微妙な働きが人間にはある。それが修養すれば修養すればするほど この働きが非常に巧妙になってくる。

 あの有名な戦国時代の剣客 塚原卜伝でこういう話がある。
 師匠の上泉伊勢守が 入門したての卜伝の肝試しをする。どんなことをするのかと思ったら 木綿糸で短刀の小柄を結わえて 天井から吊るして その下に寝ろと言うんだ。夏の日であります。
 <掛けものをかけちゃだめだ。仰向いて 腹出せ>
 <こうやって寝てるときにこの木綿の糸が切れたらどうなるんですか>
 <ズバリいくわ>
 <じゃあ寝られません>
 <ばか 寝なきゃ死んじまうわ>
 <死んじまうわって 寝てる間に落ちたら 刺さる>
 <そこで おまえが無意識に身をかわす人間にならなきゃだめだ。本当の剣道の達人になろうと思ったら やれ>
 最初の二、三日の晩は寝られない。寝られやしませんよ 目をつぶって パッと落っこったら大変だと思うから 生理的に いくらしっかりしてようと思ったって しっかりできませんわ。トロトロッとしちゃあ ヒョッと見ると まだ落っこちねえ。トロトロッ まだ落っこちねえ。けれど三日 四日たって なんべん目を覚ましても 落っこってこなくなったから これで安心だと 今度はぐっすり寝るようになった。 
 そうして ある朝 パッと目が覚めたら 自分はちゃんと座ってる。短刀は自分の寝てたところへ突き刺さってる。
 師匠が障子を開けて入ってきて <できたな。しからば これから本当の剣道を教えてやろう>といったという。
 人間というものは だんだん そうなるようになるんだよ。武術が奥義に達するというのは 結局そういう意味のことをいうんだ。
 脊髄の神経節の中に潜在するスペシャル・パワーというものが働くようにならなきゃだめです。これは単に運動神経ばかりじゃないのよ。何か考えようとするときでも こういうスペシャル・オペレーションというものが頭の中で働いている。
 とにかく こうしたいろいろな作用をわれわれの神経というものは持ってるということを考えなきゃいけないぜ。それでとにかく 万物の霊長たる人間の生活が 安心できるわけじゃねえか。

                 *

 今度は神経系統の一方を組織してる自律神経のお話しをしましょう。

―続くー



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