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<心に成功の炎を>26 

2018年05月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 私は日蓮や法然が弟子に説くときのあの艱難辛苦を覚悟して 真理説く者は自分一人が恵まれようと思っちゃいけないという意気込みをもっておりましたから たとえ樹下石上を家となすともかまわないというつもりでした。
 ただ 始めるとき 3千円だけ女房に借りました。女房と子供には一生困らないだけの金を渡して そのうちから3千円だけおれに渡させた。それはほかでもない 小岩と内幸町に家賃3百円の銀行の崩れた跡の家を十ヶ月分 3千円で借りたんです。その十ヶ月の間に私がこの未知を完全に添い遂げられなくなったら 日蓮 法然のまねをして諸国行脚だ こういうつもりでいました。ですから その3千円だって 2日ともってやしません。女房からもらってから すぐその家を持ってる人間のとこへ行って <敷金は取ってくれるな。十か月分前金で渡すから>といって 3千円を払いました。だから スッテンテレックよ。
 それでも 樹下石上なんか家とする必要はなかった。どういたしまして 月の重なるたびごとに私は恵まれた状態で もったいしごくもないありがたさで こうやって道を説かしていただいてる。  
 ただ 最初3ヶ月の間は 雨が降ろうが 風が吹こうが 焼きおむすびを腰にぶらさげて お昼前が上野公園の精養軒の前のあの四角な石の上で講演をした。その石はいまだにあります。ときどきあそこへ行って あの石を見ちゃあ 思わず熱い 胸にせきくるものを感じながら いつも帰ってくるんです。
 それから午後は これはなくなっちゃいましたがけれども 芝公園の大隈さんの銅像の下 今 テレビ塔のあるすぐわき。3ヶ月の間は 雨が降ろうが 風が吹こうが講演した。
 上野公園なんかじゃあ しばしば私は上野警察に引っぱられたもんです。無届で講演するなっていうんです。3度目か4度目に 警察に行ってね
 <おれの話すことが 無届でしていい話か 悪い話しか ここでもって講演するから 署長はじめ みんな輪になってここへ来て聞け>といって聞かせたら 署長が
 <ああ こりゃ無届でいい>っていうから
 <それならおまえ 署長の名刺に書け。この人はどこで講演してもいいと>
 そうしたら書いてくれたよ。
 とにかく 3ヶ月だけ野天講演。そうすると あの<不如帰>(徳富蘆花の小説)主人公である川島武男の弟にあたる弥吉(村井吉兵衛の養子となって村井性となる) という人と それから時の検事総長の向井巌という人が野天講演してるところを聞いて<これは野天で講演させる人じゃない>というんで 連れて行かれたのが ご承知の東京で一番階級の高い日本倶楽部。ここへ連れていって講演させられたのがもとで 天風会は非常に基礎かたく出発することが出来たんです。
 巷では 天風会はブルジョアの集まりだという評判が高かった。それはそうでしょう。とにかく 階級の高い官吏や 皇族をはじめとして 華族の連中ばっかり入っていたんですから 庶民は入れないですよ。なぜ入れないかというと 入会金が高いもの。これは私が決めたんじゃないんだ。検事総長の向井さんが決めた。
 なにしろ その当時に45円。大学出て官吏になって 初任給が50円のとき 45円出したら 5円しか残らねえ。普通の家庭で とにかく2百円月給取ってる方はめったにありゃしない。百円取って 45円出したら あと55円だ。おまんま食えないよ。まあ昔はそうであったけれど 今はそうじゃなくて安いです。
 そうしてどんどん日がたち 月を重ねて今日になった。いつになったら自分の個人の生活ができるか・・・・。40にでもなったらと思ったが どういたしまして。この分だと 死んでも死にきれねえほど いつまでも多くの人が目を覚まさにないんじゃなかろうかと思ってますが。
 これは別にこのお仕事がいやで言ってるわけじゃないんですよ。そんなような気持を過去にもっていたんですが さて それじゃあといって いまさら これをやめて栄耀栄華を求めて 私がそれでうれしい人生の毎日を味わえるかというと そいつはちょっと考えられないな。やっぱりこれがいちばんよかないかと思っています。
 その証拠にはね たとえ一週間でも講演せずにいるとね なんだかムズムズ ムズムズしちゃって 頼まれなくとも どっか行って話をしたいような気持になるとこをもってみると これが結局ようするに 私の命というものになってるんじゃなかろうかと思うんですがね。

                 *

 とにかく今日教わった三つの方法はどれだけ あなた方の人生に役立つものか はかり知れないんですよ。論より証拠 この方法を実行してみさえれば その事実が無言の雄弁となって あなた方に教えてくれるんです。それで感情を思いのままに統御できて いつも泰然自若たる心で生きられる人間になったら どれだけその人は階級の高い生きがいを感じて生きられるかわからない。
 しかし こういう方法を知らなければ 一顰一生(編集注 顔をしかめたり笑ったりすること。一喜一憂)薄い氷の張った上を歩かせられるような びくびくとした人生で やれ病だ やれ悪い運命だとおいまくられて 自分の現在の日常生活を楽しむよりも 苦しむほうをよけい感ずるという結果がきます。
 人生はどんな場合があっても 自分自身を苦しく生かしちゃならない。いかなる場合があろうとも 自分自身が 本当に明るく朗らかに いきいきとして勇ましく 生きられなきゃならないのであります。
 そうしてはじめて 万物の霊長たる人間としての本来の面目が発揮できるばかりでなく 荘厳に雄大に正々堂々たる人生が生きられるんだ。
 さあ 明日といわず 今日からたったいま教わった しかも簡単にして価値高いこの方法によって ご自分自身をつくりかえなさい。

<積極>の篇 第二章 絶対積極 、、、、終、、、、

―続くー

<積極>の篇 

第三章 強い生き方



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