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御袋の味（稲荷鮨）　

2018年04月05日
テーマ：男の料理

四・五歳の頃、食事の支度をしている母に、へばりついていた時のことである。
味噌汁に入れる油揚げを切っていたが、私の求めに応じて、切れ端をくれた。
調理前の油揚げの、乾いた食感が好きだった。
小学生になると、遠足の弁当は、決まって稲荷鮨と太巻。
その頃は、名前を知らなかったが、今でいう助六鮨だ。

社会人になり、最初の勤務地の駅前に、稲荷鮨と海苔巻の店があった。
今は、大きなビルに建て替わり、その店は無い。
店頭で販売していたが、さほど広くない店内で食べることもできた。
昼餉に利用したこともあった。
熱々の豆腐の味噌汁で食べる、少し甘めの稲荷鮨は、二日酔いの胃に優しかった。

先日、スーパーで、稲荷鮨用の味付け油揚げを買った。
賞味期限に余裕があったので、忘れてしまい、昨日、慌てて稲荷鮨を作った。
炊き立てのご飯で作った酢飯を、油揚げに詰めるだけだから簡単だ。
目論見より僅かに大きすぎたが、酢飯をふっくらと詰めたので、二口で食べきれた。
上々の食感で、わが半生を思い出しながらの昼餉になった。

夕餉は、この日に買った初物のウルイの他は、有り合わせで調えた。
ウルイのお浸しは、酢味噌で食べたが、爽やかな色と歯応えが、実に良かった。
さっと茹でたから、葉は歯応えが残り、付け根はねっとりとした感じだった。
春キャベツと共に、初物のウルイで、春を感じさせる食卓になった。
締めに稲荷鮨を一個食べたら、また、母を思い出した。

　　　＊＊＊＊＊

写真
4月4日（水）の昼餉と夕餉

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