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日本の民話「水のたね」 

2017年07月29日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

水の たね 松谷みよ子 講談社青い鳥文庫 日本の昔話1 より再話

昔ある山奥の村に 独りもんの与左衛門さんいうお人が住んでおった。与左衛門さんの村はなあ、山の中腹にあるもんで、水がないんよ。飲み水も、畑にかける水も、谷に下りて汲んで来にゃならん。田んぼは一枚もなく、村人は米を食べたことがない。稗やら粟やらがおもで、蕎麦はご馳走だった。そんな貧しい村なんよ。
ある日与左衛門さんは街に用事があって、久しぶりに山を降りて来た。川のほとりまできた時、子供らが集まって何やら大騒ぎをしておる。見れば、真っ白い蛇を追い回して、とうとう1人が捕まえた。するともう1人が大きな石を振り上げて「たたきつぶしちゃる!」と言ったので、与左衛門さんは慌てて飛び込んで行った。「こぉれ、惨いことしちゃぁいけん。銭をやるけぇその蛇わしにくれろ」子供らは顔を見合わせて「銭くれるならやるわ」銭を持つと、わーっとどこかへ走って行ってしもうた。
与左衛門さんは蛇に「よかったなぁ命拾うて。もう子供らに捕まらんように、山へ入るなり川へ入るなり、早ようせえよ」と言うと蛇は嬉しそうに川を泳いで行った。
与左衛門さんが用事を済ませて、川のほとりに戻ったときには、川面に靄が立ち込めておった。「与左衛門さん、与左衛門さん」もやの中から声がした。「はて、わしを呼ぶのは誰ぞな?」「私じゃ。龍宮の乙姫じゃ」「乙姫さんがわしに何の用かいの?」「昼間のお礼がしとうて、ずっとここで待っとりました」「昼間のお礼?」「はい、子供らに捕まって危ないところを」「あっ、あぁあ、あの白い蛇は乙姫さんじゃったんかいの」「はい、ですからどうぞ竜宮へ遊びにおいで下さい」乙姫さんは与左衛門さんの手を取った。すると与左衛門さんは何にも分からなくなり、気がついたら龍宮の大広間に座っておった。見たこともないご馳走が並んで、綺麗な女の人が歌うてくれたり舞うてくれたり。それはそれは楽しいところじゃった。けれども与左衛門さんは畑が心配になった。今朝は水を掛けて来んかった。菜っ葉は干からびてるんじゃなかろうか。そこで 「乙姫さん、わし帰りとうなったわ」と言うと、「ほうじゃろ ほうじゃろ。帰りとうなったらいつでもお帰りなされ。ではお土産を差し上げましょう」と言って 龍宮の宝の蔵へ案内してくれた。蔵の中は眩いばかりの珠や、金銀の見事な細工物、様々な焼き物、美しい布など目もくらむばかりに、積み上げられていた。「この中から何でも一つ、お好きな物をお持ちなされ」と言われたとき、与左衛門さんは地味な徳利に目がとまった。「乙姫さん、あの水のたねって書いてある 大きな徳利は何ぞな?」「ああ、あれは書いてある通り水のたねで、傾ければなんぼうでも水が出てきます」与左衛門さんは目を輝かせて、「わしそれ欲しい。それ下さい」乙姫さんは呆れて、「もうちっと良いものをお持ちなされば良いに」と言ったが、与左衛門さんが、どうしてもそれが欲しいと言うので、「ではどうぞ」と手にとって渡してくれた・・・・・・と、思ったら、与左衛門さん目が覚めた。そこは何時もの貧しい我が家であった。
「いや〜不思議な夢を見たもんじゃ。それにしてもあの水のたねの徳利は欲しかったなぁ〜、でも夢じゃ仕方がない。どれ、水神様にお参りしてこよう」と出かけて行った。
水神様の祠の前で丁寧に拝んで顔を上げたら、目の前にあの水のたねの徳利が供えてある。与左衛門さんはびっくりしながら、「これはもう何としてもいただかにゃあならん」と、水神様に丁寧にお願いしてとっくりを胸に抱えた。中でこぽこぽと水の音がしておる。与左衛門さんは、村を見渡せる高いところに上ると、とっくりを傾けて見た。とくとくとくとく、水は際限なく湧いて出た。どくどくどくどく、どんどん勢いを増して、足元に沼ができた。沼はたちまち溢れて、次の沼ができた。次々に溢れて、48の沼が出来た。それでもまだ止まらず、川になって流れてゆく。与左衛門さんは徳利をそこに寝かせておいて、山を駆け下りた。「おーい!皆の衆、水だ、水だ、水がきたぞ〜っ!」びっくりして飛び出してきた村人たちは、朝日にキラキラと輝く沼を見て狂喜した。
それからは荒地を田んぼにして、みんなは米が食べられるようになった。この水で作った米は殊の外美味しいと評判になり、村はたいそう豊かになったと言うことじゃ。



(私が語りに良いように再話したものです)

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