メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

北軽井沢 虹の街 爽やかな風

92歳老人北軽井沢移住生活奮闘記(40) 

2016年10月03日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し




しかし、当然のようにいいことばかりはない。野菜直売店を開店し、ほぼ一月が経過したころの出来事だ。思いのほか仕事が順調で爽太は有頂天になっていたに違いない。初めての大失敗はそんな時に起きた。8月の中頃、一番売れる時期なので商品の量も多く、トラックは重量オーバーで野菜を入れるコンテと呼んでいる箱の数も多い。コンテは重ねるとしっかりと噛み合い一体となって安定するが、少しでもずれているとちょっとした衝撃でも外れてしまう。
草津へ向かう近道を登りつめてキャベツ畑が広がる場所の少し手前に、道路を横断している溝がありその鋼製の溝蓋が道路面より窪んでいる場所がある。爽太はいつもその場所では慎重にスピードを緩めてゆっくりと進んでいた。しかし、その日はいつもより荷が重く、上り坂なのでその操作が微妙に難しい。もう一息で登り切るという場所なので、唸りを上げて進む軽トラックの操縦も、つい調子にのったものだ。窪みの溝蓋を通過したとき、突然ガッシャーンという大きな音とともに煮崩れが起こった。コンテがうまく噛み合っていなかったのだろう、最後部のコンテが一つくずれて斜めに傾いた。爽太は急いで車を止めて降りてみると、荷台から落下したキャベツがコロコロと坂道を転がっているのが見える。爽太は夢中になってキャベツを追いかけた。何個のキャベツか定かでないが狭い道路いっぱいにキャベツが転がっていく。追いついたキャベツを止めてまた走る。爽太は泣きたいくらいなさけない気分になって必死にキャベツを追う。この時爽太の頭の中は丸いキャベツを恨んだ。キャベツが四角ならすぐに止まってくれただろうにという漫画のような気持ちが膨らんだ。やっとの思いですべてのキャベツを止め、一個一個拾い集めながら汗びっしょりで額を拭いながら何度もトラックへと行ったり来たり。落下したキャベツは12個。頭の中はパニック状態だ。
 
慣れたころに事故は起こる。油断は禁物。そんなことはこの歳になって分かりすぎるほど分かっているのだが、「気を引き締めろ」という忠告はキャベツ12個の犠牲で済んだ。
ここでいつまでもがっかりしていられない。爽太は態勢を立て直して出発した。いつも早めに出発していたので、開店時間には十分間に合った。爽太は、傷のついた外の葉を何枚か剥ぎ取り、事情を話して半額で販売し、損害を半分に出来たが冷や汗の出る出来事だった。
 
そして失敗はもう一つある。前日に予約してもらったブルーベリー10パックを積み忘れるという失敗だ。店に着き荷物を降ろし終ってそのことに気が付いた。時計を見ると7時35分。爽太はすぐに引き返し取りに帰ることを決断。幸いなことに道路は混んでいない。荷物を降ろした軽トラックは軽い。飛ぶようにぶっ飛ばす運転は、若かったころを思い出す。キャベツ畑の風景は目に入らずひたすら時計を何度も見ていた。店に戻ると8時20分だった。何とか事なきを得たが冷や冷やの開店となり、頭が正常になるまでかなりの時が必要だった。大きな失敗はこの二度だけで済んだが、景色が見えなくなってきたと感じるようになったのはこのあたりからだった。しかし、この苦い失敗は後の仕事に大いに役立ったことも事実だ。
そして話を聞いてくれて、半額でキャベツを何個も買ってくれた常連客の暖かい心にも触れることができたのだった。
 

>>元の記事・続きはこちら(外部のサイトに移動します)





この記事はナビトモではコメントを受け付けておりません

PR







掲載されている画像

    もっと見る

上部へ