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人生日々挑戦
「月見草」
2016年07月27日
テーマ:俳句ポスト投稿
「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第149回 2016年6月9日週の兼題は、「月見草」である。
俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「月見草」に対する投稿の入選結果は、次のとおりである。
月見草龍飛ぶ崎に風よけて 人選 津軽わさお
被曝せし月見草やなにもかもが 並選 津軽ちゃう
三津浜や船乗り送る月見草 並選 津軽まつ
月見草乙女の像を仰ぎ見る 並選 篠田ピンク
水郷の女舟を仕舞いて月見草 並選 野々原ラピ
「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。
今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「月見草」に対する投稿の入選結果は、言わば、人選の1句は、上位210句内の句、並選の4句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。
それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。
つきみそうリコーダーならラの音だ 天選 ひろしげ8さい
本当の「つきみそう」は黄色ではなく、白い花で時間とともに色を変えていく、いかにも儚げな花であることを知ると、猶更こころが揺らぎます。
一句一読、ハッとしました。「つきみそう」を「リコーダー」の音に喩える発想はもちろんですが、「ラの音」という感覚にハッしたのだと思います。「リコーダー」の柔らかい音のイメージだけだと、季語「つきみそう」の持つ美しい負性を表現しきれませんが、音階の中の「ラの音」にはかすかな翳りがあるように感じられます。
音楽の授業の聴音で、ドミソの和音とドファラの和音は、なんでこんなに気分が違うんだろう?と思ったことがありますが、作者ひろしげ8さいの心を似たような思いが過ったのかもしれません。
聞くところによると、沖縄の音階にはレとラの音がないのだそうです。ドミファソシドの音階で紡がれる沖縄の歌の持つ懐かしさや温かみは、音の成分にも要因があるのかなと思います。
「つきみそう」を「リコーダー」の音階に喩えると「ラの音だ」という詩的断定は、さざ波のような淋しさそして憂いとなって、読者の心に寄せては返します。「ラ」という音への感性、「つきみそう」の儚さへ寄り添う心、それらが八歳の少年の心を通して、こんな詩語となって結実していることに静かな感動を覚えます。
以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。
俳句の作り方として、季語の「月見草」の味わいを音楽の曲に喩える方法はあり得ると思うが、「リコーダー」の音階に喩える方法は、まったく思いつかない。仮に思いついたとしても、ドレミファソシラドのどの音階かとなると、残念ながら、御手上げである。
まあ、敢えて無駄な抵抗をしてもしょうがないから、夏井いつき先生の講評の中身を自分なりに分解しつつ、理解しようと思う。
まず、読者は、「月見草」をドレミファソシラドの音階のうち、ラの音階に喩えるのが適切だと分かることが前提となる。
次に、俳句として、「つきみそう」は「リコーダー」の音階の「ラの音だ」との喩えは、詩的断定として読者に了解される。
と同時に、「ラの音」の音感と「月見草」の儚さが相まって、「さざ波のような淋しさそして憂いとなって」、「読者の心に寄せては返」す。そして、夏井いつき先生曰く。
「ラ」という音への感性、「つきみそう」の儚さへ寄り添う心、それらが八歳の少年の心を通して、こんな詩語となって結実していることに静かな感動を覚えます。
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