メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

吾喰楽家の食卓

二月中席(品川心中噂達引) 

2016年02月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

■林家あんこ
開口一番、女性の前座が登場した。
後日調べたら、林家しん平の弟子で、前座歴は二年だという。
演目の『狸札』は、子供に捕まった子狸が、助けてくれた男に恩返しする噺である。
子狸は愛嬌があって悪くないが、男の口調が一本調子だ。
噺が終わると、自ら座蒲団を裏返し、メクリをめくり、次の演者の名前に替えた。
ところが、彼女はメクリの脇から離れず、立膝で正面を見据えていた。
数人の客が、入って来た。
彼女は、客が席に着くのを待っていたのだ。
通常、前座は開演時間に先立ち口演するから、前座が終わってから入場するのは、必ずしもマナー違反とは云えない。
でも、できれば、前座の口演も観てあげたい。

■林家彦丸
林家彦六(八代目正蔵)の孫弟子で、師匠は鹿芝居の脚本を書いた正雀だ。
二ツ目にしては上手と思ったら、お開き前の挨拶で、今春、真打に昇進することが判った。
演目の『高砂屋』の口演が終わると、前座の金原亭駒六が、座蒲団を裏返し、メクリをめくった。
ところが、彼もメクリの脇で、じっとしている。
今度は長い。
団体客が、ぞろぞろ入って来たのである。
これは、酷いマナー違反だ。

■金原亭馬治
昨年の春、真打昇進披露公演で、馬治が平伏する姿の美しさに、私は見惚れた。
この日の演目『強情灸』は、男性しか登場しない噺だ。
それなのに、所作に色っぽさがある。
一年間でこんなに変わるものかと、驚いた。

■ハル&ヨノ(漫才)
古今亭菊春と金原亭世之介による、にわかコンビだ。
鹿芝居の日の恒例らしい。
洋装の世之介が、奇術を披露し、少し遅れて登場した菊春が、助六姿で團十郎もどきの見得を見せてくれた。
何れも上手いとは云い難いが、充分に笑わせてくれた。
その後のコントで、世之介は、菊春が鹿芝居の稽古をさぼった裏話を、暴露した 。

■蝶花楼馬楽
『時そば』で見せた、かけ蕎麦を食べる仕草が、実に素晴らしい。
もり蕎麦とは違う、かけ饂飩とも違う、本当にかけ蕎麦を食べているかのような仕種だ。
何度も、盛大な拍手が起きた。

■林家正雀
一種の芝居噺である『紙屑屋』を熱演した。
特に義太夫の語りは、素晴らしい。
最前列だったので、汗が飛ぶのがよく見えた。


■金原亭馬生
実質的なトリである馬生は、『紙入れ』という、間男が登場する艶笑落語(バレ噺)を口演した。
昨年も、同じ演目だったらしい。
人情噺は重いので、鹿芝居の前には相応しくない。
持ち時間も二十分しかないから、軽いノリの噺を選んでいるのだろう。

■寿獅子
仲入り前は、菊春と世之介による獅子舞だ。
高座での獅子舞を短時間で切り上げ、客席を回った。
最前列に居る私は、初っ端、獅子頭でガブリとやられた。
ご祝儀を用意していなかったのは、失敗だった。
荷物はロッカーの中だ。
ティッシュペーパーで、おひねりを作ることもできない。
これからは、ご祝儀を胸のポケットに用意しておくことにしよう。
いつ必要になるか分からない。

   *****

落語の『品川心中』を元に、竹の家すゞめ(林家正雀)が、鹿芝居『品川心中噂達引』の脚本を書いた。
金に困った女郎白木屋お染(林家正雀)が、客の貸本屋金蔵(金原亭世之介)を道連れに心中する噺だ。
親分辰五郎を演じた金原亭馬生が、総監督を務めている。

通常、落語の『品川心中』は、前半の心中未遂で終わっている。
今回の鹿芝居では、道連れにされた金蔵が、親分の力を借り、お染に仕返しをする後半までを演じた。
主要な出演者は、皆さん上手だ。

笑わせてくれたのは、脇役陣。
中でも、女中、メイド喫茶嬢、新米女郎の三役をこなした古今亭菊春が面白い。
何れも、原作には登場しない役柄だ。
また、子分たちが演じるアドリブもいい。
アドリブといっても、あらかじめ準備されたものではある。
五郎丸のポーズや、例の「履いています」の台詞だ。
一年生真打の馬治は、師匠の馬生から「二ツ目に戻すぞ!」と、激を飛ばされた。

『品川心中噂達引』が終わったら、恒例の手拭撒きと三本締めで、この日の公演は終わった。
国立演芸場の客席数は三百で、国立劇場と違い、さほど広くない。
ベテラン噺家ほど慣れているのか、手拭を最後列近くまで飛ばしている。
最前列には、飛んでこない。
ところが、噺家の一人が、最前列の高齢の客を選んで、五人ほどに手拭を渡していた。
中々、粋な計らいだ。
一見、若そうに見える私は、当然ながらパスされた。
でも、今、手元に正雀師匠の手拭がある。
ロビーの売店で、師匠のサイン入り著書『彦六覚え帖』を買ったら、景品に手拭が付いてきた。

   *****

写真
2月15日(月)の演題と正雀師匠の手拭



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

SOYOKAZEさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

昼席と夜席の入れ替えがない寄席の場合、客の出入りは寛大なようです。

国立演芸場でも、慣れた客はタイミング良く着席します。
今回、団体客だったので、まごついたのでしょう。
前座さんは、メクリの脇に待機して、次の出番のタイミングを計っていたのです。

回り舞台ではないので、苦労はあるようです。
でも、立派な舞台でしたよ。
最近、歌舞伎でもコントもどきがあります。
でも、個人的には五郎丸や履いていますは、無くてもと思います。

2016/02/18 09:52:25

パトラッシュさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

私にしては、長いブログになりました。
もっと長くしたほうが、かえって、解りやすいかも知れません。
「寄席って、面白そうだな。行ってみようか」と、思う方が一人でもいればよいのですが。

2016/02/18 09:30:34

マナー

さん

おはようございます。

私は能を観に行った時に驚きました。
元々、休憩時間が短くて、お年寄りには無理なのですが、演じている間に、始終人が出入りし、一つだけ観て帰ったり、ラストの大物の時だけ来たりと酷かったです。
幽玄の世界云々とあったのに、ザワザワして、興ざめでした。

寄席には寄席のマナーがあるのですね。
でも、団体でバスが渋滞で遅れた場合などは、舞台上の方が去ってから入ればよいのでしょうか?

鹿芝居、コントのような場面もあるようですが、本編は、しっかりした舞台になっていましたか?
真面目な芝居の中に、安っぽい今の流行のギャグが入るのは、好みではないのですが。
(私は演劇専攻だったので、どうも、その辺は頭が固いようです)

獅子頭に頭をガブリは、演技がよいそうですよ。^^

2016/02/18 09:07:52

寄席のレポートとして

パトラッシュさん

読み応えがありますねえ、今日のブログは。
単に字数が多いということではなく、内容が濃いからでしょう。
芸人をよく観察しておられる。
そして、芸の真髄へと迫って行く。
既にして、べテランの寄席愛好者になっているようです。
粋客となる日も近いでしょう。
そう、祝儀をさりげなく渡せるようになった暁には・・・(笑)

2016/02/18 07:53:10

PR







上部へ