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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その4 

2015年12月25日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


http://blogs.yahoo.co.jp/yktsp534/65296324.html の続き
 
このクイーンランドという別荘地を管理しているのは、クイーンランド興産で、別荘地メイン道路入口に事務所を構えている。この別荘地の管理費だけで一億円を超える収入があると聞いていたが、事務所には多くの社員が働いている。ここに来て、爽太は千恵子とともに、まずはここへあいさつに出向いたが、その応対は意外に冷ややかだった。責任者である所長は、「永住すると言ってここに住まれた人のほとんどが2年か3年で帰られますよ」
といい、いかにも爽太夫婦も寒さに音を上げてしまうだろうと言いたげな口ぶりだった。
とにかく寒いところだから気を付けて下さいと、その作り笑いのような笑顔には、爽太も千恵子もあまりいい気分ではなかったが、結局はクイーンランド興産を通して家を買わなかったのが気に入らなかったに違いないと考えた。
 
移住生活を始めて二人は、まだ数人の人しか出会っていない。それは、村役場で転入手続きをしたときに会った係の人、管理事務所の所長とスズランの街の担当者、郵便局の窓口係の人などだった。何しろ、誰一人知り合いのいない場所に来たのだから、それは覚悟していた。6月の半ば過ぎ、これから梅雨に入る。意外とサバサバして元気な千恵子に爽太は救われたような気分だった。どこに誰が住んでいるかわからないところだったが、近くに「ペンションひまわり」があって、まだ営業しているように思えた。千恵子は離れていてもお隣さんに違いないのであいさつに行こうという。
ペンションひまわりから爽太の家までは森が続き建物はないので、200m以上距離があっても、隣には違いないのである。ペンションを訪ねると、70は超えていると思われるオーナーらしき人が現れ、ニコニコと笑顔で迎え入れてくれたので爽太はホッとして、「ここはずいぶん寒いと聞いていますが、雪もたくさん降りますか?」と質問を投げかけてみた。すると、「寒い寒いと言ったって、そんなこと言ってたらスエーデンやノールエーの北欧の人たちはどうなるの!」と、独特の語り口で話し、大声で笑った。二人はここで初めて人間らしい笑いに出会い、心からほっと一息ついた感じだった。
 
長い間苦労ばかり掛けてきた千恵子に、最後は好きな場所で好きなように暮らせる協力者に徹する覚悟でここにやってきた爽太だったが、第一線を退きリタイア後の生活がどのように展開していくのか、さっぱり見当もつかなかった。つい半月前までは、毎日どれくらいの人と電話で話したことか、どれだけ仕事で悩まされたことか、もう何も考えなくていい、もう何も心配しなくていい、その後の人生はもうゆったりと暮らせるだろうと、ただ簡単に考えていた。しかし、静かすぎる森の中で、誰とも出会わない日々に予想もしなかった焦燥感に襲われ、戸惑う自分に気付いた爽太の心は少し乱れかかっていた。
 
 
 

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