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心 どまり

好きこそものの・・・でも 

2015年08月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:回想

 台風も日本海に抜け、温帯低気圧に変わり安心しました。
台風経路の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。  

 先日、孫と『筆遊び』をしながら、祖母との思い出がよみがえりました。祖母の文机の隣に小さな机をを並べて貰い、筆でお絵描きをしていた幼き日の事を!

 母が申すに、まだ読み書きも出来ないのに、祖母の真似をしてミミズが這っている様な仮名文字や花や虫らしきものを描いていたとか。
はっきりとは覚えていませんが、記憶の欠片を辿りますと、祖母の書や文の文字の綺麗だった事、又『筆遊び』で描いてくれた蝶は、飛んで行ってしまいそうでしたし、蛙は、今にも飛び跳ねそうでした。
同時に、弟妹達との枕元で母が読み聞かせてくれた、一休さんの鼠の話に興味津々だった頃を!

 小・中学生の頃、放課後居残りをさせられて出品作品制作に時間を取られるのは嫌でしたが、文字を書く事は嫌いではありませんでした。

 当然の如く、高校の選択教科も書道を選びました。
普通科だけの進学校でしたので、選択科目の授業は、音楽・美術・書道に別れますから、他のクラスの子達とも一緒に授業を受ける事になります。

 その中にひとり、ずば抜けて字の上手い子がいたのです。
成績は普通でしたが、とても美人で、所謂垢抜けているお洒落な子でした。
ですが、少々不良っぽい所が有り、学友達からは敬遠される傾向に有りました。

 所が、私にとって彼女は、入学当初から何故か気になる存在でした。二年生になる頃には、いつしか気の置けない友に!

 二年生の秋の事でした。
文化祭の作品展示も一通り終わり、最終確認をしておりますと、彼女の作品に目が留まりました。
見事な字体で、漢詩が条幅に認(したため)られています。

 彼女の作品が展示されるのは、常にセンターです。
運が勝敗を決めるAKB48のセンターとは、ちょっと違うかな〜
彼女のセンターは、実力で勝ち取ったものですから
でも、運も実力の内と言いますものね!
AKB48の少女達も、運に加え人知れず重ねた並々ならぬ努力の賜物なのでしょうから!
と言う事は、同じと言う事?!

 私の作品はと言いますと、そのお隣のお隣あたり!
彼女の作品は、字の形も、線も、墨の濃淡も全てが素晴らしく見事で完璧でした。
でも、何かが足りない!伝わってこないのです。
只漠然とそう感じていたのですが・・・

 いつ来たのか、作品を見て居た私の後方から彼女の声が!

「私ね!お習字って嫌いなの!
 良香は、好きでしょ!書いている時の良香は
 楽しそうだもの!」

 驚いて振り向くと、投遣りで淋しそうな表情の彼女が立っていたのです。当時の記憶は薄れていますが、そのシーンだけは鮮明に覚えています。

 彼女の詳しい事は知りませんでしたが、聞かずとも耳に入って来る噂によりますと、書道教室を営む母親との、複雑な家庭環境で育ったようです。
彼女も言いたがりませんでしたし、私も敢て聞きませんでした。この時までは!

 何も言えず、黙って聞いている私に、彼女は続けます。

「私ね、大学に行ったら一人暮らしするの!
 そしてね、書道も止めるの!」

 小さい頃から強制的に筆を持たされ、否応なしにお稽古を強要され、嫌々練習をしていた彼女でしたが、上手く書いたり、賞を取った時の喜ぶ母親の顔が見たくて、頑張ったとの事!

 その時、気付いたのです。彼女の”字”に足りなかったもの!
それは『心』、字を愛する心、楽しむ心が込められていなかった事に!

 『好きこそものの上手なれ』『習うより慣れよ』

祖母の口癖でした。

「お上手に書こうとしなくていいのよ!
 筆が教えてくげれる線を書いてね!」

 当時は、祖母の言う事が理解出来ませんでした。
他界した祖母の年齢に近付くに連れ、朧げながら祖母の人生観を、そして筆を通して伝えたかった想いも、解る様な気がします。
字を書く楽しさを教えてくれたのは、祖母でした。
『書』に限らず、物事を楽しむ事を教えてくれたのも祖母です。

 何年振りかの『筆遊び』が、思い出させてくれた『楽しむ心』です。
筆を持つ事が、『お習字』が嫌いでも、素晴らしく上手だった彼女は今、筆を持つ事は無いのかしら?
完全に『書』から離れる事が出来たのかしら?

 歳を重ね彼女を慮る時、『お習字』は嫌いでも『書』は好きだったのでは無いかと思えて仕方が無いのです。

 彼女に逢いたいなあ〜 そして祖母にも!



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悠遊人さんへ

良香さん

>別に恰好つけることもないし、感触を忘れない
 ために続けています。

仰る通りです。
心の赴くままに筆を取られますのが、賢明な方法ですね!
出品をしなく成りまして、暫く経ちますが、趣味で書く『書』は、技法に囚われる事なく、又悩む事も無く、楽な気持ちで書く事が出来るようになりました。

 人間、多少の緊張感の必要性は解っているのですが、ぬるま湯にどっぷり浸かっておりますので・・・

コメントをありがとうございました。

2015/08/31 11:18:43

筆遊び

さん

私はひとりで筆遊びしています。

定年後10年程先生について習いましたが、その老先生も亡くなり、今は毎月送られてくる書道冊子の競書に出すくらいです。

別に恰好つけることもないし、感触を忘れないために続けています。

2015/08/28 10:42:15

マリーさんへ

良香さん

 まあ〜 マリーさんからコメントを頂けるなんて
感激一入です。ありがとうございます。

 私もその様な気がします。
お母様の後を継いでいてくれたら嬉しいのですが!
継いでいなくても、母ひとり、子ひとりでしたから
”お傍に居てあげてくれていたら”と想います。

2015/08/26 15:37:56

maruさんへ

良香さん

 お孫さんがお上手では、楽しみですね!
孫の成長は、一縷の淋しさも有りますが、
楽しみが勝ります。

 ”万年筆”懐かしいですね!
やはり、書道の一環として、ペン字検定を
受けさせられました。取り敢えず二級です。
筆と違いペン字は誤魔化しが効きませんの
で難しいです。(笑)

 いつもありがとうございます。
感謝致しております。

2015/08/26 15:21:32

まあ〜 toboさんまで

良香さん

 煽てないで下さい。でも嬉しいです。
阿Qさんにも書かせて頂きましたが、私煽てに
弱いんです。嬉し過ぎて木の天辺処か、雲の
上まで飛んで行ってしまいそうです。

 そうですね!祖母の逝った年齢に近付いて
参りまして、解って来た事が多々あります。
本当に、”歳を重ねて”ですね!

 最近の入賞作品を拝見しますと、『技』に
拘り、優先した作品が目に付きます。
この様な生意気な事を言える筋合いではない
のですが・・・

 嬉しいコメントをありがとうございました。

2015/08/26 15:06:19

阿Qさんへ

良香さん

 未だ々、祖母の足元にも及びません。
阿Qさん流の言い方をしますと
「まだまだ修行が足りない。」です。(オホホ)

>能力を自由に伸ばしてやって下さい。

ありがとうございます。努力します。
孫も煽てに弱いんです。私に似てね!
余り叱る事もしませんし、有りませんの
でいつも褒めてばかりの駄目ばあばです。
               (*^-^*)v
 阿Qさんから頂いた此のコメントを見せて
あげましたら、孫は何も言わずに、ニヤッ!と
していました。
嬉しいコメント感謝致します。

2015/08/26 14:27:36

たまさんへ

良香さん

 まあ〜 お孫さんも!楽しみですね!
高校時代は、心身の成長に比例して、字体も『お習字』から『書』に成長する時期ですから、書く事を楽しみながら続けて欲しいですね!
書を学ぶと言う事は、言霊を、延いては古人の心を学ぶ事に通じますもの!
いつもありがとうございます。感謝致しております。

2015/08/26 13:48:56

書はからきしダメですが

さん

いい子を演じていた彼女。
足りない何か…。
書に限らず、愛する心、楽しむ心は原動力になります。
彼女は書からいったん離れたものの、また今も関わっているような気がしてなりません。

2015/08/26 09:44:26

字はすきですが・・

さん

おはようございます

私は筆はもちませんが、万年筆で字を書くのがスキですが、一向に上手く書けません。
でも中2の孫は上手いのです。

隔世遺伝です・・^^

2015/08/26 08:32:55

良いお話で

さん

良いお話です。好きこそですね。。(好きが重要で)
テクニックだけでない部分が人間には有るようで年齢を重ねれば重ねるほど解ってきます。文章から良香さんの人間としても重厚な部分も伝わってきますよ。

2015/08/26 08:26:34

ソボ降る雨の朝に感じた事

阿Qさん

「好きこそものの・・・」、全くその通りです。
貴女様もその祖母の意志・役割を受け継いでいるようですね。
爺・婆のたわいもないブログを孫に見せ、それに興味を持って的確に反応するお孫さんの知性・感性が末恐ろしい。
能力を自由に伸ばしてやって下さい。

2015/08/26 08:22:47

なるほどね〜

さん

こどもの頃からの書であり大好きなおばあちゃまとの筆遊びのなせる技だったのですね。孫が高校生でまだ書道を続けてるんだけど、書は続けてほしいな。
また楽しませてね。

2015/08/26 07:55:10

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