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ショート・ストーリー【名前の無い関係】 

2015年01月21日 ナビトモブログ記事
テーマ:恋話

好き勝手にBlog小説をUPするが、どなたかの
書き込みで目にした「長過ぎるBlogはどうかと
思う…」と、あった。
そんな辛口(?)コメント読んだ記憶があり、
書き物を暖め過ぎて、ふやけた感があり、UPが
憚れるところではありますが。
思い切って(少々訳があって)、気紛れな気分で
本日UPしてみました。
駄作もたまにOKと思ってくださる寛容な方、
お暇な方、お立ち読みくだされば幸いでございます。

★==================★
「名前の無い関係」

小野田 里子45歳、身長159センチ、体重46キロ。
日本人の体形としては小さくも無く、大きくも無く、
標準的な女性の体型である。
そんな里子には結婚歴は無く、独身のままだが今も
特に結婚願望は持っていない。
むしろ、男性受けする容姿であると自分なりに
満足している里子は、結婚に対し拒否している
訳ではなく、この歳になっても結婚は勢いがある
時に弾みをつけてするものだと、何処かで時を
見ながら悠然と構えているところがある女性。

 季節は既に晩秋に差し掛かる冬を待つある
朝の風景である。
冷たい朝の空気を感じながらも、いつものように
窓を開け、ひと時、外を眺めることがこの地に
来てからの里子の習慣となっている。
郊外型マンション12階から見渡せるこの眺めが
気に入り、3年前に衝動的に手に入れた住まいである。

‘今日も気持ちの良い一日になりそう…‘
毎日、お呪いのようにそうつぶやく。

その日も、出勤前の鏡の前で「よし!」とメイクの
仕上がりに満足したように鏡に向かって笑顔を作り、
部屋を出ていく。
働く女性も男性と同じく、今や外に出れば「七人の敵」が待っている。
また、反対勢力への対処法も身に付けていなければ、
まだまだ男社会が蔓延っている今の社会では生きて
いけないという考えもある。
里子は、そんな鼻っ柱の強い面も持っていた。
しかし、そこは男と女しかいない社会。
‘ここぞ…’という所では女の強みも弱みも使い
こなす、なかなかのやり手女であることも自覚して
いる。
短大を出てから24年、社会の中で自立した生き方をしてきた女性として、仕事も人間関係のさばき方もスマートで居たいという生き方が里子の美学でもある。
職場では、後輩への思いやりも嫌味なく、力量を超えた仕事を任せられて四苦八苦している後輩へは内緒で手伝ってやることも多い。
それでも奢らず、頼れる先輩と一目置かれる存在になっていた。
そうした里子は、社内でも女子社員や派遣社員の中でも、なんでも相談に乗ってくれる憧れの先輩であり、 ‘女盛りのイイ女‘といえる存在なのである。
そうした里子は、TVでもCMが流れる外資系製薬会社に
25年勤務し、現在は人事部に籍をおくキャリアウーマンである。

夕刻、会社を出ると、首に巻いたストールがビル風の
直撃を受け、顔に巻きつき、目を覆ってしまった。
とっさに手にしていた紙バックが手から離れ、北風に
押され一人歩きするように、二転、三転してカサ・
コソと音を立て枯葉のように転がりだした。
あっと、声をあげながら追い駆けはじめた里子に
気が付き、前からくる人が咄嗟に足で止めてくれた。
里子の髪と顔は強風で巻きついたストールでいっぺんにくしゃくしゃになり、やっと顔をあげて立ち上ると、
息を切らし「あぁ、りがとうございます」というのが
やっとであった。
「やぁ〜、こちらこそ足で踏んでしまって…
申し訳ない」と、やはり慌てて早口に答える男性。
やっとの思いで顔中にストールと張り付いた髪の毛を
拭いながら、顔をあげたが慌てふためき、あられもない姿になっていることが恥ずかしかった。
紙バックを拾い受けてくれた男性を見上げ、思わず
作り笑いをするのが精いっぱいである。

「良かったですね。中身が飛び出さなくて」
「お陰様で、助かりましたわ」
「しっかり、抱きしめておかないと」と、そう言い
ながら男性は軽く会釈をしてビル風が吹く中、背中を
見せて歩いて行った。

里子はホッとしたのか、髪を手で押さえながら
‘あ〜ヨカッタ’と胸を撫で下ろす。
‘低音のいい声の人だったなぁ…’と思いつつ、
言われたとおり今度は紙バックを抱いて会社の前の
道をそのまま歩き出した。
里子の会社は、法律事務所や証券会社も多いオフィス街にある。
地下鉄の駅までは5分だが、途中、横道に入り込むと、
小粋な小料理屋や老舗のBar、スナックが程よい距離で
点在している通りになっている。

ほんの数分間の出来事に疲れを覚えたのか‘ちょっと、いっぱい呑んでいこうかな’
そう考えた里子は、たまに行くBarに寄ってみようと…、その横道を曲がって歩き出した。

その通りの突き当りには、小さな赤い鳥居の先に
稲荷神社があり、そこを起点に路地は左右に別れ、
飲み屋街になっている。
そこで見かけるお狐さんが鎮座するちょっと不気味さ
もある小さな神社。
元をたどれば、平家にかかわりのある女性が敗戦後
その身を使って、生きる糧としたことに由来する地で
あることから、祀られている。
「商売の神様です」という由来を記した張り紙を読んで以来、里子はこの通りに入ると必ずお稲荷さんの前で手を合わせていた。
 元は出の良い位の高い女性とて、その身を使って生きる糧に商売を始めたとは…
生きるためとは云え、何と自立した精神だと、ここ日本橋界隈の飲み屋街に建つ
小さな稲荷神社の前で妙に共感した覚えがある。
通りの突き当りを左に折れると、そのBar「昴」がある。
そっと扉を開けると、ふぁわ〜と暖かい空気が迎え入れてくれるように
冷えた体を包んでくれた。

ほぼ一年ぶりに入ってみるBarである。
久しぶりに訪れてみるが、年季の入ったバーテンダーでありオーナーである斉藤さんは‘覚えてくれているかしら?’と、女ひとり気後れする思いもある。

‘今晩は…’カウンター端のハイチェアーに荷物を
置きながら挨拶を交わす。
「いらっしゃいませ。お久しぶりです!」斉藤さんは
いつもの静かな口調ながら懐かしげに迎えてくれた。
客はまだ居ない。
「あ〜ヨカッタ!」
「何がヨカッタのですか!?」
里子は会社を出た途端、風のいたずら事の顛末を
話しながら、冷えた頬が緩んでいく。
「ここに立ち寄って、ヨカッタです」と言ってみる。
「じゃ〜、もっとヨカッタ思いになるよう温まっていってください」と、斉藤さんは嫌みなくオシャレな会話ができる初老の紳士である。
蓄えた口元の髭にも白いものが目立つ。
里子の父親年代の斉藤さんだ。
この「昴」もこの地で40年近くBarとして生き残っていると言っていた…。

斉藤さんは「これは、お通しです」と、小さなグラスから湯気が昇るホットワインを出してくれた。
「えぇ、ホントですか!?」まだ注文する前に、その日の顔色、表情を読んで無言で出してくれる「お通し」と称するお酒に、以前にも驚いたことがあった。
でも今夜、差し出してくれたホットワインは特に嬉しく、オーナーである斉藤さんの優しさが心に沁みる。

急に寒くなって…と、小さなグラスを手の中に納めると指先に熱さを感じるほど。
ゆっくり口に含むと、喉元から浸み渡り身体の芯まで
暖かさが広がっていくようだ。
斉藤さんは‘でしょ!?’と言わんばかりに軽くウィンクしてみせる。
何処にも嫌味な匂いがない素敵なマスターだ。

里子は軽く小腹を満たせるお摘みを頼みながら、
何を飲もうかと斉藤さんの背後に並ぶキラキラ光る
酒瓶の棚を眺めてみる。
カラン、コロンと、ドアに下げられた真鍮のベルの音と共に、隅の席に座っている里子の後ろを冷たい空気と共に二人目の客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」の店主の声を聴きながら、コートを脱いだその客は、里子から二つ空けた椅子に腰を掛けようとしている。
斉藤さんはカウンターに両手を広げて、その客が落ち着くのをにこやかに見守っている。
里子は‘斉藤さん、この人には何を出すのかしら?’と、悪戯な気分になっていると…
「バーボンをストレートでお願いします」と里子の手元にさっと目をやりながら、その客は迷いなく注文した。
里子も空になったグラスを横に置きながら慌てて
「斉藤さん、次、私はバーボンのロックで」と言って
しまう。
斉藤さんは「初めてですね、お連れの方は?」と言いながら、Markaer’s Markの瓶を取りグラスに注いでいる。
「いえ、一人です」と男の声が左の耳から聞こえる。
里子の前にもバーボンロックが来て、同じ種類のお酒のせいか、互いに自然とグラスを上げ、乾杯のしぐさで
軽く会釈を交わす。

「おやっ…先ほどの風の君ですか?」と、男の声に
顔を向けると
「・・・・」「あ、紙袋を捕まえてくださった…」
「紙袋のあなた様ですか!?」
里子は咄嗟には判断が付かなかったものの、風の君に
反応し「あなた様」と返してみる。

「先ほどは、ありがとうございました」
「いえいえ、当たり前のことですよ。足元に転がってきたので…」照れくさそうにそう言いながら、煙草とライターをグラスの横に置く。
それを持ち上げるしぐさで「煙草、よろしいですか?」
里子も「もちろん、私もたまに吸いますから」

それがその男との出会いの時。

そう、それから…1年が経つ。
里子の会社生活は変わらず、46歳を迎えた冬に
なっていた。  
          つづく・・・



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秋さんへ

彩々さん

今日はやっと晴れましたよ。
そちらも晴れているでしょ!?

森瑶子さんねぇ。私も数冊読んでます。
他の女流作家さんと一線を画してましたね。
今もお元気でおられれば、また違った面を
見せてくれていたでしょうね。
好きな女性像だったので、褒め言葉と
受け取っておきますね。

全く意識もせず書き始めて…、後編は
行き詰まりっぱなし!><;

またUPしたら、見てやってくださいませ。

2015/01/23 15:35:51

森瑶子の世界

秋桜さん

彼女の全盛期の輝いたころの小説に似ています。
キャリアウーマン、垢ぬけたバーと洋酒の類。
まさに、おとなの女でないと書けない恋愛小説です。
彩さんのこれまでの生き方が表出されて
いるようで心から拍手です。

どんどん先を進めてください〜〜〜
楽しみです。

2015/01/23 11:01:23

プラチナさんへ

彩々さん

いつも拍手をくださってありがとうございます。

喜美さんへの返コメにも書いたように
ドラマティックな展開は(多分)無く、
一人の女性の心模様を淡々と…

それもこれから考えていく段階です。
また、御立ち読みくださいませ。
m(_ _)m

2015/01/22 07:34:01

喜美さんへ

彩々さん

おはようございます

返コメが遅くなりごめんなさいね。
昨夕は例の会の脱稿祝いと新年会を
兼ねまたT市のTの店で集まっていました。

昨日のみぞれ交じりの雨の中、みんな
好きですよねぇ。
私の拙作は、箸休め感覚で読んでいただければ
幸いです。
出会いがあり、そして今がある…
逞しくという感覚では無く、自然体で生きる
女性像を淡々と描きたいかと思ってます。
というものの…次のUPは未定です。

2015/01/22 07:29:07

プラチナさん

Barでの奇遇な出逢い、その軽妙な描写、場面が浮かぶようです、ストーリーの展開が楽しみですね。

2015/01/22 00:15:26

如何して

喜美さん

書く人は大変かもしれないけれど
どうして すらすらと自然にかけるのかしら 書けない人間は楽しみにしていますからよろしく

2015/01/21 15:00:27

パトさま

彩々さん

取敢えず、引きこもりにならずに
済みそうです(笑)

でも実際にお会いすると、ビシバシと
鞭打ちの刑に処せられそう…。

2015/01/21 12:22:31

Yさんへ

彩々さん

コメントありがとうございますm(_ _)m

ナビの世界で恥ずかしげもなく、公にUP
してしまいましたが、Yさんに読まれるのが
一番、恥ずかしいです(似合わない!?)
今日のS・ストーリーに何かおっしゃりたい
はずです(笑)

確かに
>トラブルを生むだけの指摘だなぁ、

この方、そういえば最近お見かけしませんね
病院のサロンかって!?
お嫌なら、読まなければいいだけですものね。

ほとんどがシニア年代、生きてきた道はそれぞれ。
そして今、何故かここに集まって居るのですから
仲良しごっこはしなくとも、暖かい目で支え合って
いれば、いい事です。

画像の入れ込み方に工夫を加えられたらと
思うことがありますが、こうした勝手小説や
人様にお見せするほどでも無いメニューも
UPする私の場合、下方に添付できるだけで
充分です。

2015/01/21 12:18:03

パトラッシュさん

「仏のパト」と言われております。
(何処で?誰から?とは、突っ込まないで下さい)
ご安心を。
鞭は、求められない限り、用いません。

文の良否を、長短の外形基準だけで判断するとは、笑止です。
本文の場合、まったく長さを感じさせません。

2015/01/21 11:54:44

いつも思うけど

さん

おはようございます。

此処のブログ、画像を文中に貼り付けられたら
雰囲気が、もっと引き出せるのになぁと改めて
感じます。

雰囲気が出ていい店の照明、うちは節約で暗いだけ
なんと、この違いの大きさよ・・・汗

どなたなのか存じませんが書かれるのが長いとか、
トラブルを生むだけの指摘だなぁ、

此処で遊ばせて貰っているシニアナビさんに毎日感謝です。
機会を与えて頂けることに感謝する、心得ておかないと。

2015/01/21 11:44:34

Soyoチャンへ

彩々さん

スミマセン><。

結末を考えてからでなくては
書けない私ですが、いつまでたっても
考え着かつかないのよ。

女と男の違いみたいなのを書いてみようかなと
思ったのが始まりです。
元々、このテーマは、エンドレスなのにねぇ。

2015/01/21 11:15:40

大人の恋?

彩々さん

ゴク兄いへ

女45,6歳は、そこで成長するか
後退するかのターニングポイントだと
思っています。
さぁ、恋と言うのか…必需品というのか?
自分を振り返っても、なんせ、とうの昔ですから
もう、大変でございまするぅ。

2015/01/21 11:13:49

パトさま

彩々さん

格式も何も無い、数年の違いで変わる
女の心模様を描きたいなと思っておりますが、
次の展開は何も考えてませんの。

きびしいご指導は、私の「引きこもり」に
つながりますので、どうぞ、ご容赦を…。

2015/01/21 11:10:39

文体

吾喰楽さん

中々、いいですね。
大人の恋でしょうか。

彩々さんの文体を、感じさせてくれます。

長いブログが嫌いな方は、スルーなされば良いだけのことです。

2015/01/21 10:44:48

うん

パトラッシュさん

うまい。
詳細は後ほど。

2015/01/21 10:31:52

洒落た雰囲気の男と女

さん

大人でないと書けない話しね。
思えば、自分が一番綺麗だったと思う歳が45〜6だったから、納得のシチュエーション。
挿絵のような写真も効果的で、イメージが頭の中で鮮明になったわ。

さて、この二人、このまま「はい。さようなら」は無いでしょうからねぇ・・
次回の展開が楽しみね。

2015/01/21 10:27:23

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