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小説「結婚物語」No.3 

2014年09月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:暮らし

次の週、私は神戸の実家で所用があったため、
新幹線で関西に向かっていた。
所用に向かう前に、知り合いの方からの紹介で
運命鑑定予約をいただいていたため、一旦、
新大阪で下車する必要があった。
初対面のため、新大阪駅近くのホテル玄関前を
待ち合わせ場所にしていた。

彼女は、新大阪駅北口からの連絡通路になって
いる空中道路を軽やかな足取りで歩いてきた。
Aラインのシフォンのワンピースの裾を初夏の風に
軽く揺らしながら…。
ポニーテールにした毛先も歩調に合わせるかのように
左右に揺れている。
彼女なりの計算し尽くされたかのようなおしゃれ
センスだと思った。
意地悪に言うと、男性にはイイかもしれないが
同性には本能的に「嫌われるタイプの女性」に
入るのではと思ったものだ。

にこやかな笑顔のその女性は、確信したように
私が立つ待ち合わせの場所に近づいてくる。
待ち合わせピッタリの時間である。
「○○先生ですか?」と言いながら駆け寄ってきた。
「お待たせしてしまって申し訳ありません」と、
待たされていないのに…と思いながら私も名を
名乗り、互いに軽く挨拶をしながら歩きだし、
ホテル内ラウンジに静かに鑑定できる場所を確保した。
改めて彼女は「大下かをりと申します。本日は
どうぞ宜しくお願いします」と、はきはきと
澄んだ声で自己紹介をしてくれた。
使い慣れた標準語に、私は素直に疑問をもって
しまい
「お育ちは関西だとお聞きしていますが…」
「両親も関西人ですが、私、関西弁が
嫌いなんです」と。
おや、おやと思ったが、そんなところで
関西弁談義をしても時間がもったいないと、
本題に入ることにした。

鑑定時には相談者のカルテにするための用紙があり、
記入をいただくことから始めている。
氏名・生年月日・相談内容を書き込む欄・
両親の生年月日と抱える問題に関係する人物の
生年月日など、記録として書き込んでいただく
ことにしている。
相談者が記入している間、私は独自の
運勢診断ソフトを入れてあるパソコンに向かい、
生年月日を打ち込んで基本診断のための彼女の
支配星を出してしまう。

そして、書き終わったカルテなるものに
目を通しながら…

年齢:27歳
住所:大阪府○○市・・・
学歴:国立○○○大学卒
職歴:政府系金融機関○○○勤務
家族関係:両親・妹・弟
…etc

目の前のかをりさんは、ソフトで上品な
イメージの美人さん、おまけに優秀な女性と
いうことのようだ。
そもそも、対面鑑定の相談者は誰にも言えないと
思っている悩み事を聞いてもらいという願望があり、
その悩みの解決法も8割がた答えは、自分で持って
いる(決めている)ものである。
しかし、プロである運命鑑定士は、ただ聞いて
差し上げるだけではむろん役に立たず、運命学に
よる統計や分析法から客観的な立場で明解に
運命を解き、方向性を示唆することが必要である。

当然、情報サイトによく出てくるサービスの
一環に出てくる“良くある質問”に対する
的外れな回答のようであってはならないと
思っている。
鑑定士は己を「無」にし、ゼロの立場で鑑定を
させてもらっている。
この目の前のかおりさんも、私的な意見など
求めているのではないはずだ。

かをりさんの相談内容は“恋愛・結婚問題”の
欄が○で囲われていた。

私は開始の時間を確認し
「では、ご相談の内容をお話し下さいますか」と
切り出す。
かをりさんは、1-2年付き合っていた男性と
最近別れたと…「結果」から話し出した。
良くある恋愛相談の始まりであるが、相手の
気持ちが解らない…だの、
復縁はあるか…だの、
だからどうしましょう…といった悩みは
既に吹っ切れているような口ぶりである。

彼女は、仕事絡みで知り合い、熱い恋愛期間も
過ごしたことなど話したが、別れた理由は
自分の親に交際さえ反対されたことが大きな
理由だと言う。
確かにご両親は、高校の校長まで務めた教育者で
ある父親と専業主婦という家庭。
厳格な家庭であったことや常に優等生で居なければ
ならない状態で育ったと話す。
また、妹を挟み下に弟がいるが、その弟は出生時より
重度の脳性まひを患う身障者が身内にいると
しっかりとした口調で告げ、家族助け合って
その弟を育ててきたと明るく話す。

どうやら、かをりさんはご両親から長女としても、
きちんと躾けられ、世間様に対しても恥じないよう
お行儀のよい優等生を求め続けられ、大人になって
いった女性のようだ。
その家庭環境からくる他人には解らない重圧を
感じながら、自分なりに不撓不屈の精神も同時に
培ってきたのであろう。

悩みの相談者にありがちな沈黙の時間もなく、
むしろ始終、笑顔で話し、私からの鑑定診断と
なる解答も聞き逃すまいとするように、意思を
固めつつ、時折、鋭い目も向けて聞いている。

そう…この、かをりと名乗る女性と出会ってから既に
十数年が経とうとしているが、私の中で忘れられない
「結婚物語」になろうとは、この時は思いもしなかった。           つづく



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Blog探訪も疲れますでしょ!?

彩々さん

性懲りなく書いておりますBlog小説に
コメントいただきありがとうございます。

ナビ友さんは次々と発表されてますが
多分、私は既にネタ切れなので終わりです。

今度はL・Aを舞台にしてインターナショナルな
大恋愛物でも何か書いてください!

2014/09/29 13:26:07

彩々さん

ウイールマンさん

なかなかスムーズにストーリーがいっていますね。

読みやすいし、ストーリーの流れも大変面白いですよ。

2014/09/29 11:59:19

喜美さん

彩々さん

いつもコメントをありがとうございます。

物語上、誇張して文章にして作っていった方が
後につながりやすいとも考えました。
登場人物のイメージがつかめ、その人物を
想像しやすく書くのも難しいものがありますが
楽しみに読んでいただけて、彩々 感激して
おります。

2014/09/28 17:58:15

彼女

喜美さん

大下かおりさん こんな人嫌われるどころか羨ましいような人じゃない
こんな人でも悩み事あるのかしらと
思いながら読んでたの
恋愛は全く別なんだ 次も急いで
楽しみにしています

2014/09/28 16:15:14

パトさんへ

彩々さん

お疲れのところ…
読んでくださって、申し訳ありません
m(_ _)m

実はつぶさに伝えてはいなくて…
このNo.3の運命鑑定技法のくだりは
まだ続くのですが、文字カウントが3000字近く
になったもので、中途半端な所で区切ることに
なりました。
それで、文末に取って付けたように、
注釈がましいように「つぶやき」で誤魔化して
しまいました。

でも、どうつなげていこうかと??

2014/09/28 15:37:51

ここですか!?

彩々さん

ありがとうございます。
執筆しながら、仲間の書いたものも
読むのは大変でしょう。
適当にお読みください。

でも、文中の以下の句に反応されましたか!?

’同性には本能的に「嫌われるタイプの女性」…’

確かに、男女がそれぞれの本能で受け取る
感情ですから、説明がつかないといえば
そうですが…。
男性は本能的に庇ってあげたいと、
思ってしまう(思わせる)女性なんですよ。


反対に女性は…、言わぬが花 でしょう!?

ご指摘くださった1・2 1〜2 1-2 
どっちでも良いと思いますが?

2014/09/28 15:29:03

Soyo姫へ

彩々さん

こんにちわ

当サロンの会員である食パン君は、生まれた時から
食パン君のまま成長したような男性。

今回、登場させたかおりは自分で
自分の人生を創り、勝ち取っていく女性。

果たして食パン君の運命は如何に…
サスペンスかって!?(笑)

2014/09/28 15:11:24

楽しいです

パトラッシュさん

運命鑑定の一部始終を、つぶさに伝え、読者の興味を引き付けてやみません。
文の流れにも、よどみなく、練達の手腕を感じさせます。

2014/09/28 14:50:24

快調

吾喰楽さん

こんにちは。

すらすらと、ストーリーが流れていますね。
ほとんど、一気に読み進みました。

>同性には本能的に「嫌われるタイプの女性」に
入るのではと思ったものだ。

本能的にだから理由は不要かもしれませんが、異性の私には、数回、読み返しましたが理由が解りません。
性別を問わず、好感が持てる女性に感じました。

>1-2年付き合っていた男性と

重箱の隅で恐縮です。
「1・2年付き合って」の方が良いと思いました。
私には、「1〜2年付き合って」の方が、まだ抵抗がありません。

2014/09/28 14:27:43

惹きこまれたわ

さん

流石、お仕事の話しだけあって理路整然、知らない分野だし、興味も深々、相談者のかおりさんのキャラも魅力的だけど、子供の事を考えると弟さんの一件はマイナスポイント。

なのに前にお付き合いしていた方とは、彼女の御両親の反対で別れた。

さてさて、彼女が物語にどう絡んで来るのか?
食パン君との絡みは?と明日が待ち遠しい私です。

2014/09/28 14:03:35

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