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「相棒・親子の情愛」 

2013年12月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:人生

刑事ドラマ「相棒」を観ていると、水谷豊演ずる杉下右京と成宮寛貴演ずる甲斐享の相棒コンビによる犯人探しの謎解きストーリーが面白い。なるほど、なるほど、と納得して観ながら、事件が解決する。

 事件が解決した時点で放送時間がまだ5分くらい残っているときがある。こんな場合は、要注意だ。その残り5分のシーンに、脚本家の先生が真に訴えたかった主題が潜んでいることがあるからだ。

 「相棒」の登場人物の中で成宮寛貴演ずる甲斐享と石坂浩二演ずる甲斐峯秋は、親子である。この親子は、共に警察官であるが、警察官としての立場が違う。

 甲斐峯秋は、数多くの警察官の中で一握りのキャリア組つまり警察官僚であり、若い時から警察組織は自分が背負い、動かしていくとの自負に燃え、エリート中のエリートコースを歩んできた。
 今や、全国にまたがる警察組織の実質ナンバーツーの警察庁次長であり、次の警察庁長官と目されている。

 対する息子の甲斐享は、警察官の中で圧倒的多数のノンキャリア組である。学校の成績については、父親には似ず、父親のように飛び抜けて優秀とはいかなかった。

 甲斐峯秋は、息子が父親と同じようにはいかないことがあることは理解しつつも、時として甲斐享を不甲斐なく思うこともある。

 甲斐享は、父親の鋭敏さや優秀さは認めつつも、時折息子を不甲斐なく思う感情を敏感に察してしまう。ゆえに、甲斐峯秋の生き方に対する批判を抱き、反発の念を引きずってきている節がある。

 そんなわけで、杉下右京に相対するとき、甲斐享も甲斐峯秋も、それぞれ親子の一方を良くは言わない。


 去る11月13日放送の「相棒」の第5話「エントリーシート」では、就職活動中の女子大学生が殺害される。

 女子学生A子は、一流商社のB社の面接を受けるに際し、就活テクニックの指導スクールの先生から、B社は、社会貢献活動に熱心で、ボランティア活動に積極的な学生を採用するらしいことを聞く。

 A子は、大学1年生の時に、海外最貧国で井戸掘りのボランティア隊の隊員として活躍した実績がある。
 その海外の活動時に、日本からボランティア隊の活動を見学に来た男子学生C男もいた。C男のねらい目は、見学したことを後に就活に利用しようとすることだ。
 真のボランティア精神に燃えるA子は、就活を有利に進めるだけのためのえせボランティア活動を軽蔑した。

 A子は、海外最貧国での井戸掘りのボランティア隊活動に誇りを持っていて、就活を有利に進めるために、それを利用する気はない。よって、B社の面接では、井戸掘りのボランティア隊活動には触れなかった。

 B社の面接を終え、二日ほど経った頃、A子は、B社の面接員の一人から電話を受ける。

 その面接員は、3年前にB社に入社した社員で、その後、テクニックを弄し、今やB社社長の娘と恋仲になっている。このまま進めば、将来のB社大幹部への出世競争で勝てる。

 電話をかけてきた面接員と会ったA子は、面接時には、緊張していて相手の顔をろくに見ていなかったが、一対一で会い、顔をじっくり見た瞬間、驚いた。
 面接員は、あの時のC男だったのだ。そう、海外最貧国での井戸掘りボランティア隊活動時に、日本から見学に来ただけの男子学生C男だ。

 C男は、B社の面接で、自分は、海外最貧国での井戸掘りボランティア隊活動を主導した者なるぞ、と大いにホラを吹いた。まあ、うそをついてB社に採用されたわけだ。

 C男は、B社の面接に来たA子を見て、驚愕した。A子の口からうそがばれれば、どうなるか。C男は、気が気でなくなった。うそがばれれば、B社社長の娘との恋仲もパー。B社社員もクビ。

 C男は、A子に、君は、B社に向いていないから、B社の採用試験から撤退し、ほかを受験してくれと頼んだ。

 A子は、冗談じゃない、と断った。かつて真のボランティア精神に燃えていたA子は、就活を有利に進めるだけのためのえせボランティア活動のC男ごときに、指図されるいわれはない。冗談じゃない。

 C男とA子が口論し、もみ合ううちに、C男は、A子を殺めてしまう。

 こんな感じの流れで、第5話「エントリーシート」では、犯人探しの謎解きストーリーが展開していく。なるほど、なるほど、と納得して観ながら、事件が解決する。
 
 放送時間がまだ5分くらい残っている時点で、相棒コンビの会話が続く。

 杉下右京 「今の学生は、就職活動で内定を取るのが 大変なんですねえ。甲斐君の時は、どうでしたか」

 甲斐享  「ぼくらの頃も、今に負けないくらいに厳しかったですよ。ぼくも脇目も振らず、何社かを受験し、いくつか内定をもらいましたよ」

 杉下右京 「おや、それじゃ民間企業の社員になるつもりだったんですね」

 甲斐享  「はい、そのつもりで数社の内定を取ったんですが、そのうち、なんか違うなって感じ始めたんです」


 杉下右京 「おやおや、甲斐君は、民間企業相手の就活が上手くいかなくて、まあやむを得ず、気が進まない警察官になろうとしたとばかり思っていましたよ」

  
 甲斐享  「就活を一生懸命やって、数社の内定を取って、やれやれとなった途端、俺が本当になりたかったのは警察官であることに気づいたんです。それで、警察官になるために、東京都の地方公務員試験の勉強を寝ないで必死でやりましたよ。で、やっと合格できました」
 

 この会話のやり取りで、私たちは、甲斐享の本音を初めて知ることができる。

 甲斐享は、幼い頃から、警察組織の中でエリート中のエリートコースを歩み、自信満々の父親、甲斐峯秋の後姿を見て育ってきた。

 時として、甲斐峯秋の生き方に対する批判を抱き、彼に対する反発の念を引きずってきている節がある。
 
 しかし、実のところでは、甲斐峯秋を尊敬とまでは言い切りたくないものの(ここの微妙さ加減がいい)、高く評価し、ゆえに自分も警察官になる決意をしたのだ。


 ラストシーンの場は、小料理屋「花の里」だ。杉下右京が店のカウンターの右側の定席に座っている。カウンターの正面に座っているのは、甲斐峯秋だ。
 甲斐峯秋が杉下右京を誘って、右京が行きつけの「花の里」で一緒に飲むということのようだ。

 甲斐峯秋が、あいつがまた君に迷惑をかけているんだろう、そして自分のことを批判しているんだろう、といった調子で話しかける。あいつとは息子の甲斐享であり、困ったもんだ、といった調子だ。

 いや、そうではありませんよ、実はかくかくしかじかと、杉下右京は、その日の右京と甲斐享とのやり取りを要領よく教えてやる。

 それを聴いて、甲斐峯秋がつぶやく。「そうか。あいつがそうだったのか。そうか」

 いつもは憎らしいほどに堂々としており、ミスター警察庁然とした警察庁次長の石坂浩二演ずる甲斐峯秋がにこやかに微笑んでいる。心から嬉しそうだ。彼のこうした表情は、「相棒」に登場してから初めて観るなごやかさだ。

 杉下右京に相対するとき、甲斐享も甲斐峯秋も、それぞれ親子の一方を良くは言わない。しかし、息子の甲斐享は別としても、親の甲斐峯秋は、内心ではいつも息子のことを気にかけている。世の中に、息子の幸せを願わない親はいない。

 そして、警察庁次長、甲斐峯秋は、甲斐享が警視庁特命係で杉下右京と相棒を組ませて貰っていることに、いつも手を合わせて感謝しているはずだ。

 このように、「相棒」の第5話「エントリーシート」で脚本家の先生が真に訴えたかった主題は、甲斐峯秋と甲斐享の親子の情愛である。

 
 

  
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トパーズさん

「相棒」は、こちらでは土曜日夜11:15pmからです。
その前に、「半沢直樹」の最終回があり、こっちを
力を入れて観ていたら、相棒の方は、途中で
少し眠ってしまい、ストーリーがちょん切れてよく
分らなくなってしまいました。
成る程、そういう展開でしたか。

2013/12/16 04:52:21

親子の絆

さん

wasaoさん、こんばんは。
今シーズンの第1話ラストシーンでしたか、甲斐峯秋のことを犯人にののしられた甲斐亨が、なんともいえない表情で犯人を殴った時に目に見えない親子の絆を感じました。

また、もうじきです。相棒ファンにとっては元日スペシャルなしにはもはや1年ははじまりませんね。

2013/12/15 23:31:17

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