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人生日々挑戦
津軽弁・「投げる」
2013年12月04日
テーマ:暮らし
私が住む青森県の特性を考えてみた。
真っ先に浮んだのが三方を海に囲まれていることである。日本海と太平洋に面する県であり、北海道南端(道南)との間に、国際海峡である津軽海峡が横たわる。明治維新以降、戦略上の重要拠点の一つとして位置づけられてきた歴史がある。
ことのついでに、日本国の中で日本海と太平洋の両方に面する県は何県あるのか知りたくなった。
ネットで調べたら、次のような質問と回答がヒットした。
質問 日本海と太平洋の両方に面している都道府県が分かりません。社会の宿題で出たのですが調べても分かりませんでした。2つあるようですが教えてもらえないでしょうか。
回答 北海道と青森県です、多分・・・。因みに、兵庫県と山口県は”日本海と瀬戸内海”に面しています。
自分でも頭の中で日本地図を思い描きながら考えたところでは、北海道、青森県、山口県の三道県が浮んだ。山口県は日本海と瀬戸内海に面しているのだとすれば、残りは、北海道と青森県の二つである。なるほど。
明治維新での廃藩置県後、青森県は、旧津軽藩の全地域と旧南部藩の一部の地域から成っていることから、旧津軽藩の地域は津軽地方、旧南部藩の地域は南部地方と呼ばれる。
青森県の中央を走るのが奥羽山脈の八甲田山系だから、青森県は、八甲田山系によって、日本海側の津軽地方と太平洋側の南部地方に分けられる。
日本海側の津軽と太平洋側の南部とでは、気候がかなり違う。冬は、津軽は積雪地帯だが、南部は結構寒いけれども、雪はかなり少ない。南部における除雪用具は、極端な言い方をすれば、ホウキとチリトリで済む。
また、津軽弁と南部弁とでは、イントネーションがまったく違うし、それぞれの言葉の意味合いが異なる場合が少なくない。
青森県の40市町村のうち市の数は10市であるが、三大市は、県庁所在地の青森市(人口約30万人)、八戸市(人口約24万人)、弘前市(人口約18万人)である。
青森市と弘前市は津軽地方に、八戸市は南部地方に属する。
弘前市。弘前は「ひろさき」と読む。ひろまえではない。ネットの常用漢字辞典によれば、漢字の「前」は、音読みがゼン、訓読みがまえ、表外読みがセン、さきとあり、表外読みのさきを使って、「ひろさき」と読まれる。
弘前市は、津軽藩の城下町として発展し、現在も津軽地方の中心都市として、周辺自治体に広がる人口約33万人の弘前都市圏を形成している。
津軽地方における冬ならではの子どもたちの遊びは、雪合戦と津軽だこあげだ。
雪合戦は、雪を握り固めて雪玉を作り、投げ合うゲームである。雪玉を作るには、適度の水分が含まれている雪がいい。両チームが雪玉を投げ合い、相手メンバーに当てれば得点となる。
雪玉を投げるための至近距離をいかに確保し、コントロールよくいかに投げるかがポイントになる。
なんのゲームにも達人はいるもので、達人は、雪合戦で子どもたちのヒーローになる。
弘前市は、津軽藩の城下町だから、道は狭く、町内会は細かく入り組んだ印象がある。各町内会を貫いて用水路が設けられているとする。
その用水路沿いの要所には立て看板が建っている。その立て看板には、「ここでは雪を投げないで下さい。 弘前市役所土木課」といった趣旨の文言が書かれている。
はて、雪を投げるなとは? 細かく町内会が入り組んだ地域を流れる用水路沿いだ。敷地は狭い。こんなところで、雪合戦をするのは、かなりな熟練を要するだろう。
津軽弁では、雪合戦で雪玉を投げることは「投げる」という。これは、当たり前の使い方だ。
そして、ゴミを捨てることは「捨てる」ともいうが、「投げる」ともいう。「ゴミを投げる」は、「ゴミを捨てる」と同じ意味である。
なぜ、「ゴミを投げる」が「ゴミを捨てる」と同じ意味なのか? 分からない。なぜかは分からない。
しかし、日本語には、「投げ捨てる」という言葉がある。ネットのコトバンクによれば、「投げ捨てる」とは、?. 物をほうって捨てる。 「吸い殻を−・てる」とある。
おそらく、古くからの津軽衆は、「投げ捨てる」を使い、使っているうちに、「捨てる」の意味で「投げる」と「捨てる」の両方を使うようになったのだろう。
なにせ、津軽は、文豪の太宰治を生んだ土地柄だ。津軽衆がしゃべる津軽弁は、ボキャブラリーが豊富なのだ。津軽衆は、東京で「ゴミを投げる」と表現した後、周囲の東京衆のけげんな顔つきから、東京では「ゴミを捨てる」としか言わないことを悟る。太宰治もそうした経験をした。
日本列島、それは、弓なりの形をしていて、東西南北に長い列島。東西にも3,000キロメートル、南北にも3,000キロメートルもの長さがある。
そして、そのことにより、多様さは、季節だけでなく、日本人の弁にも表れる。
我が青森県における津軽弁と南部弁ほどの極端な違いまではいかなくても、47都道府県ごとに少なくても二つの弁はあるだろう。となれば、全国で100を越える弁があるはずだ。
だから、津軽弁の「ゴミを投げる」のように、標準語だと信じて、これっぽっちも方言とは思わない言葉は、日本全国のどこの地方にもあるだろう。
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